いいえ、どんなに寒くたって。
あなたの側なら俺はいくらでも幸せになれる。
だから次に来る冬も、その先の未来も、あなたの隣で過ごせたらいいのに。
「…な、天の助。トレーニングしたいんだ、俺の技…手伝ってくれないか?」
「ん、ヘッポコ丸…いーけどなんでオレ?」
「俺、その…足引っ張ってばっかだしさ」
「そーかぁ?んなことないと思うけどな」
本当にそう思ってくれてるのか、優しさなのか、解りやすいようで解らない。
「…ボーボボさんとかより弱いし」
「そりゃオマエ、比べたらの話だろ。弱くないって。運悪いしちょっとヘタレだけどな」
「…それ、お前だって負けてないだろっ!」
「ハハ、悪い悪い」
多分俺は、好き、なんだ。
対等に話してくれて、考えてくれて、認めてくれて。
優しかったりふざけてきたりが上手で、俺のことをよく知っていて。
そんな風に自惚れてふと思うのは、俺の方はどうなんだってことだ。
思うように理解できないのも、器用に甘えられないのも、痛いくらいもどかしい。
「ボーボボはさ、背、大きいよね」
「そうか?まあ年齢といっしょに背も伸びるからな」
「それにしたって大きいよー」
「ビュティだってまだこれから伸びるだろ」
「でもボーボボと同じくらいにはなれないよね」
「個人差というのはあるからな。気にするな」
「うん…」
「身長が違うし、性格が違うし、見えるものも違う。そういうもんだ」
「…じゃあ、わたしだから見えるものってあるのかなあ」
「ああ。その時は、よかったら教えてくれ」
「うん!」
違う身長、違う性格、違うものを見る違う人間。
でも違うから、こうして背中を追いかけることだってできる。
すこし小さいわたしの歩幅に合わせて歩いてくれる、あなたの背中。
大切なものを託すなら、それだけ認められる相手に。
この背中を預けるなら、それだけ信じられる相手に。
「少しずつ敵方も強くなっている」
「そうだな」
「…ボーボボ。お前が、狙われている」
「向かってくるならば戦うだけだ」
理屈ではないから言わない。
そのはずが今こうして、俺の方が弱音を吐く。
「だがあまり無茶はするな」
「しかしソフトン、狙われているのは俺だからな」
危ういからと、後ろにいられるような男ではない。
よく知っているのに、俺が弱音を吐くのは。
「…お前なら大丈夫だとは思う。それでもだ」
「ああ。するべきことはする、無謀な真似はしないさ」
認めていないんじゃない。信じていないんじゃない。
ただ、どうか失いたくないと思うことだけは許してくれ。
心にとどめたまま、お前の背中は俺が守るから。
呪縛から解放されて、自由になった。
(ボーボボさんはどうしてるかな)
この自分、ライスに勝った男だ。簡単にどうにかなるものか。
(首領パッチ先輩はどうしてるかな)
楽しい人だった。ボーボボさん達と、どんな旅をしてるんだろうか。
ずっと追いかけてきた人
ずっと思うだけだった人。
敵として戦ったことに後悔などない。
(それに、こうして助けてもらったんだもんな)
本当は、もっと話してみたかった。
自分のことを話すのもいいし、できるなら話を聞くのもいい。
もう行ってしまったのだと思うとよけいにそう感じる。
話をしてみたい。隣に座ってみたい。
楽しいようなことを、くだらないようなことを、一緒にしてみたい。
「…せんぱい」
あなたに、また、逢いたい。