短い文章(お題なし)上から菊コン、若→パチ?





「サンタクロースを信じてるか?」
「あぁ?」
「サンタクロースだ。クリスマスの使者」
「伝説の爺さんか。今時、ガキでもなかなか信じねぇぜ」
「それが、私は子供のころ信じてたんだよなあ」
「…だろうな」
「…なんで?」
「さあな」

「サンタクロースは煙突から入ってくるというだろ」
「ああ」
「煙突のない家なら窓、窓もない家なら排気口ネズミ穴トイレの…」
「…ンなとこから出てきてたまるか!何がネズミ穴だ」
「まあ、とにかく私はそう教えられたわけだ…」
「あー、そうかよ」
「そこで対抗心を燃やさずにはいられなかった」
「…何に?」
「煙突の中、着地地点、窓の側、排気口、トイレ以下略…
 すべての場所に落とし穴を掘り、ネズミ取りを置き、矢を仕掛け、まあ色々やったな」
「サイレントナイトもクソもねーな。それでどうなった」
「私はサンタクロースに負けた」
「…負けた、ねえ」
「罠はどれもこれも触れられた形跡すら無くてな。
 聞いたところによると、元から罠だらけでおかしくない家には亜空間から入るものらしい」
「……どんな理屈だ?」
「親父は強かったが嘘を吐くのは下手だった」
「……」
「…俺は、親父に騙されるのが上手かった」
「…褒められたモンじゃねぇな」
「……ああ。たまたま思い出しただけだ」


枕元には、背伸びして欲しがっていた本があったけれど。
直接ねだったことなど無かったのだ。
修行の他に側にいられる時間など殆どなかった。
強く故に多忙な男だった。


「そこでだな。今年はとりあえず本部の周りに色々と仕掛けをしてみたんだが…」
「…ッてテメーまだ信じてんじゃねぇだろーな!しかも何の意味があって本部だ!」
「何かかかるかな」
「……でかいネズミでも掛かるんじゃねーか?」

「まあ、そんなわけで。メリークリスマスだ」
「くだらねぇ」
「大人だってこうして祝うのぐらい、罰は当たらないだろう」
「ロマンチストだな。好きにしろ」
「する」
「しろ」
「俺はお前に言いたかったんだ。メリークリスマス」


「…おい」
「ん?」
「うちのブロックの暇人どもが、基地の前に突っ立ってる木を飾り立ててやがるんだがな」
「…それは良いな。お前のところの木なら、飾りの方が負けそうだ」
「疎いくせに目出たいことを言うな」
「いいだろう?俺はあの木が好きなんだ」
「…冷やかしに来るか」
「…行く」

「誘ってくれるなら、行くに決まってるだろ?」
「…バーカ」












どうせ大したものなんて持ってないんだから、
何もかも真っ白になっちまえばいいんだ。
まっさら、なぁんにもない『白』。
だって今歩く道の目の前はちっとも膨らんじゃいない。
しぼんで小さくなって、消えていくことを今から待っている。

たぶんきっと、あったってなくたって一緒なんだと思う。




俺はなにも無いところに生まれた。
そんなわけはなくて、きっとそこには何かあったんだろうが、
何も頭に残っちゃいないんだから無いのと一緒だ。

何もなかったけれど、それじゃあ生きていけなかった。
だから騙したし、殴ったし、逃げもした。
別にたいして強かったわけじゃない。
でも、それでもどうにか生きていける程度には上手くいっていた。

上手く。

上手くいってるだなんて言えるわけもないのかも知れないが、
とりあえず食いっぱぐれることのないだけマシなのには違いなかった。
ついでにそんな風に思ってれば悪い気もしない。

俺の人生なんてそんなもんなんだ。
どうして生まれてきたかも解らないし、やりたいこともないし、大切な相手もない。


もういい歳になって、食べていくことがガキの頃よりもずっと楽になった。
狭苦しい部屋に住んでそれなりに着飾ってほんの少し人付き合いをする。
寂れた場所だった。華やかに生きたいとも思わなかった。
騙すことも殴ることも逃げることも必要無いならばしたいとは思わなかったし、
こんな風に生きたいなんていう希望も無かったんだから。

短い金髪を知らない女に褒められて、よく似合うとはしゃがれた。
笑いながら思う。
金髪なんかじゃなくてよかった。
真っ白ならよかった。
何もかも真っ白ならよかった。
そうなりたいんじゃない、それでもよかったんだと思う。
どうせ何も無い。無いのと同じ。
そんな風に考えることだって、意味がないのと同じ。






ある日俺は、壁に寄りかかったまま本当に動けなくなった。


原因はまたやけに小さなガキだ。顔見知りでもなんでもない。
ぼろぼろの格好をして、裏道に群れているような連中から逃げていた。
下っ端の下っ端というのだろう。
何かヘマをしたか、金を持ち出して逃げたのかも知れない。
俺も昔はそんな風にして生きた。ただ、逃げることはなかった。
金を貯めさせてもらって、頃合いになったら少しずつ離れていくのだ。
その世界で生きるつもりはなかったし、使っている方だってそんなことは知っている。
何か損をするようなことが無きゃ、追うことだってない。

そのガキが何をしたかは知らない。
追う方は何か叫んでいるが、どうやら名前らしかった。
俺は黙ってそれを聞いていた。
そのガキにも『名前』は存在するのだ。
名前を持つというのはどんな気分なのだろう。
少なくとも無くたって困らない。必要になったって、その場しのぎの代用品があればいい。
生まれた時に名前を与えられなかった俺は今もそれを持たず、そしてそれを知らない。

佇んだまま飛び交う音を聞いていると、物騒な音が響き出した。
銃声だ。
ガキの方が妙な逃げ方をしているのだろうか。音はうねりながら近付いては遠ざかる。
俺は眉を顰めて、そこから立ち去ろうと
した。

したのだけれど、
遅かった。

ガキが近くを通りでもした末のことだったのか、
それともただの流れ弾だったのか。
誰もそれに気付かなかったのか、
気付いたがしかし放ったままにしたのか。
何も解らない内に脇腹を鉛が貫いて、


俺の体は軽く跳ね、
壁にぶつかってずり落ちることで止まった。






世界が、
だんだんと白くなっていく。

このまま止まってしまうのではないだろうか。
ああ、いいな。
止まってしまうかそうでないかは解らないけれど、真っ白になるのはいい。
どうせ何も持ってないんだから、
それでいいって思ってたんじゃないか。

ここで俺がくたばったって、何かがどうにかなるわけじゃない。
俺は不思議なほど何も持っちゃいなかった。
こんな身軽すぎる男がひとり消えても何の意味もないことは、
最初から解っている。

冬中頃の冷たい路地は寒々しく、人影も無い。
寂れた街は物静かで吐息も何も聞こえてこない。
毛狩り隊の影だって感じたことがないのだ。
ああそうだ、あいつらに出会ったら面倒だからって、出会わないように生きてきたんだっけ。
この髪の毛だって数少ない俺の持ち物だから。

どうせもうすぐ真っ白になる。
何もない場所で生まれた人間が、何もない場所で屍になるのだ。


薄れていく灰色の街。

それがあと少しで白に溶ける、その直前だった。




目の前に、何かの影がやってきて立ち止まった。


「おい」
誰だ。
「おい、オマエ」
だから、誰だっていってるんだ。
「聞いてんのか?おいコラ、シカトすんな」
あんた不釣り合いだぞ、こんな寂しくて狭い路地の中で、
そんな派手なオレンジ色。

「おーい」
「…ぃて、る…よ」

「喋れないのか?」
「…ぁ」
「うお、ひでーケガ」
「……」
「そうか、こーゆー時はワサビだな。塗ってやるから待ってろ!」
「…な、なお…るか。そんな、んで」
「えー。治るよ」
「…ほ……といて、くれ」

脇腹は痛いのかそうでないのか解らないぐらいに重いし、
喋るのは苦しかったが、
その謎のオレンジ色は遠慮なんてもの知らないらしい。

「ワサビ塗らなきゃ、お前死んじまうぞ」
「…れ、を………」
ああ、そうだ。それを待ってんだよ。
「…せっかく、街が…白くなると、思った、の、に」
あんたのせいで台無しなんだ。
早くどっかへ行ってくれ。
「白か。白は好きだな、生クリームの色だ」
「…そう…かよ」
「もうクリスマスまで幾らもねーからな」
「………」
よく見ると、オレンジは座り込んだ俺よりかチビだった。
非ヒューマンの、ガキだろうか。
なら早くケーキを買ってあったかいお家に帰りな。坊や。

「でも俺がいなくなってもここは真っ白にはなんね−ぜ」

なんだ。
こいつ、俺の声にならなかった声まで聞こえてるのか。

「壁も道もあちこち汚れて黄ばんでるし、街灯や柱が黒いし、
 それにお前の着てる服も髪の毛も白くねぇ」
「…あぁ」
解ってるよ、そんなこと。
「なん、も…なくなりゃ、なんだって、いいんだ」
「そりゃ無理だな」
「……なんで」
「何も無くなるのと白いのは違うからな」
「…どう、違う?」
「白は色だろ。透明…も何も無いのとはちょっと違うか」

ハハハ、
ああ、そうか。
まいったな。
じゃあ、俺はどうすればいい。

「お前、白になりたいのか?」
「さ、ぁ…な」
「じゃあ、なれよ」
「…は…どうして」
「なりたいんなら、なれ。寝るのはいつでも出来るからな」

俺は眠たいんじゃねぇよ。

「目ぇ開け」

「開いてみろ」

それがほんとにそこに在るのかと思ったが、どうやら幻覚なんかじゃあない。
瞬間、その言葉と同時にオレンジ色の影はトゲになった。

「…あ…?」
「どーよ」
どーよって、何がだ。
どうして俺はこんなにはっきりお前が見えてるんだ。
あんた誰だ。
オレンジ色のまるっこい体にトゲ、青い瞳の非ヒューマン。
あんた誰なんだ。
「…あんた、なにもんだ?」
「俺か?俺は首領パッチだ」
「……ど、ん、ぱっち」
「そーだ。お前も名乗れよ」
「俺には…名前が、ない」
「名前がないだと!?そりゃ大変だ、お前来週あたり最初に死ぬぞ」
ああ、見ての通りもうくたばりかけてるよ。
「…ふ……」
青いその瞳を見ていると、吸い込まれてしまいそうになる。
大きく開いて鼓動している。
ああ、あんたは生きてるんだな。
ここで向かい合ってくだらないことを話してるだけなのに、それを感じる。
「…は、はは……」
なあ、あんたどうして生きてる。
どうやって生きてるんだ。
小さな手に足でどうやって動いて、そのトゲは何に使うんだ。
不思議だな。
死にかけてるはずなのに、あんたのことがすごくよく見えるよ。

すげえな、あんた。
あんたのことどうやったら騙せるかも、殴れるかも、逃げれるかも、
ちっとも解りやしない。
不思議なほどに光って見える。

「あ…んた、強いのか」
「あぁ?そーだな、俺は強いぞ」
「そうか…俺とは、違うな」
「弱いのか?お前」
「さあ……」
「まあ、その怪我だからな。なあ、まだ塞がんねーの?」
「…ふさがる、わけねーだろ……」
「そうなのか。お前不便だな」

あんた、強いのか。
あんたなら塞がるのか。
拝んでやりたいな、あんたの強いとこ。
こんな寂れた路地にいきなり現れて、死にかけてる馬鹿野郎に話しかけて、
あんた一体なんなんだ。
こんなに小さいのにやけに大きく見える。
参ったな、死にかけてるせいだろうか、

俺は生まれて初めて何かに惹かれている。

「そういや昔なあ、ボロボロになった奴を助けたことがあんだけどさ」
「……あ…ぁ」
「そいつも金髪だったぜ。お前よりずっと短かったけどな」
「……ん」
「俺ほどじゃあねえが、まあそれなりにいい男ではあったぜ」
「……」
「お前もまーまーだな」
「………」
「お前、その金髪伸ばしたらいい感じじゃね?以上首領パッチチェックでした」

「…おい?」

でももう、お別れだ。
俺はもしかして、あんたみたいなのを待ち続けてたのかもしれないけど。

「聞こえてねーのか?おい、雪降ってきたぞ」


ああ、

なんだか、

あんたに『名前』を呼ばれてみたかったな。




なあ、雪は綺麗か?







ゆっくりと目を開くと、そこはちっとも真っ白ではなかった。
地獄じゃあないらしい。
しかし、天国でもないようだ。

俺はベッドに寝かされていて、起き上がろうとすると脇腹がずきんと痛んだ。
どうやら包帯に巻かれているらしい。
直後、俺は悲鳴をあげた。
黄色い小さなのが山ほど、俺の周りを取り囲んでいたからだ。

小さいのは口々にこっちへと、名乗れ喋れとわめいてきた。
名乗ることはできない。名前が無いからな。
喋ることもできない。何もちっとも解らなくて、喋ることなんて何もない。
ついでに脇腹も痛い。
ああ、そういえばあの首領パッチと話してた時は不思議なほどに痛くなかった。

呆然としながらそう考えた瞬間。
待ち受けたようにドアが開いた。
そこにはやっぱり黄色いのがわらわらと、そして囲まれるように、
首領パッチが立っていた。

ここはハジケ村。
連中はハジケ組。
首領パッチは『おやびん』。


ここは本当に俺が這ってきた世界なんだろうか。
あまりにも空気は温いし賑やか過ぎる。
呪文のように唱えられる言葉と、
魔法にかけられたかのような状況に、
俺はぼんやりとくだらないことを二つも考えた。

もしこの首領パッチが本当に強かったら、髪を伸ばそう。
そして白い服を着よう。無の白じゃない、雪だとか生クリームの持つ色の白だ。


「おい、ケーキ食うぞケーキ。お前も食うだろ?」
「…え…」
「わーい、ケーキだー」
「食っとけよな。おやびん、フライングクリスマスケーキとお前一緒に抱えてきたんだぜ」
「本番までまだ相当あるけどな」
「それはそれだよね」
「人間がここ来るなんて、破天荒以来だなー」
「しかも破天荒のヤツと同じ金髪だし」
「でもこいつのはさらさらじゃん」
「な」


「んでお前、食うだろ?ケーキ」

「……あ…あ。いただき、ます」



どうやら俺は名前はないままだけれど、
道の先に『この目で』何かを追うことを覚えてしまったらしい。

あってもなくても同じではなくなってしまった。


長い金髪。
白い服。
あんたの側。

実行の日は、そんなに遠くもなかった。










菊コンはなんだか、クリスマスにちょっと考えたものでした。捏造設定かよ!
コンバットは一応?クリスマスカラー…といえなくもない…かな(緑)
若パチ(?)はもう、すみません。90%捏造です。…名前のない男、ハジケ組若頭…

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