短い文章(お題なし)上からOVER(OV天)、天の助(OV天?)、菊コン





何より誇れる技でお前をころしてやるよ
何より親しい刃でその姿を斬り裂いて
何より固い地面にその飽きない影を
何より深い声に出さぬなにかごと

いつか
何より永久に沈めてやるよ

だからお前は泣き叫びながら
時に耐えながら
俺から目を離そうとしながら
それができないまま
この刃の先から果てまでを見つめて
怯えて俺を待っていろ

愛撫を足音に変えて
言葉は拳に変えて
口付けは悲鳴に交え
どうした
俺はお前に表しているだろう

真っ直ぐにお前をころしてやるよ


何よりいとしい愚かな獲物め













「なあなあ」

ちょっと触ってもいいか。
そんで手ぇ握っても、いいか?




「かたい」
「なんだお前、難癖付けにきたのか?」
「かってえんだもん」
「まあスチール製だからな。仕方あるまい」
「…マジで!?」

戦う男の手だと思った。
でもほんとはそんな硬くもない。 ボーボボ。

「うん。ちょっとやわらけぇ」
「何がだようるせぇな」
「デコッパチってけっこーマッチョのくせに白いよな………ハイこちょこちょー」
「…ぶッ!!」
「はははっ」

殴られた。
やっぱボーボボに比べるとちょっと柔らかい。でも痛ぇの。 破天荒。

「…おー。実はけっこーすべすべ?」
「……なんの話なんだ?」
「なんでもねぇー」
「…お前は、見た目以上に柔らかいな」
「まあ、俺ところてんだし」

あんなごっついもん呼ぶくせに、この人実はけっこう優しい。
怒らせると怖いんだけどね。 ソフトン。

「あったけぇー」
「そうか?俺、そんなに体温とか高い方じゃないと思うんだけど」
「だって他の奴よりあったけぇもん」
「そうかな…ってお前ちょっと待て、なんかそれじゃ俺が小さな子供みたいじゃないか」
「そうなん?」

子供は体温高いんだって、確かに言うけどさ。
それとはちょっと違う気がすんだよなぁ。 ヘッポコ丸。

「あ。一番やわらけー、やっぱり」
「うん?そうなのかな、みんな男の人だから?」
「あとちっちゃい」
「天の助君の方が柔らかいよー。でも何のためにやってるの、これ」
「いやー別にぃ」

あ、ヘッポコ丸の前にこっち来てたら、間接握手だったんだな。
なんて今思いついた。へっくんざんねん。 ビュティ。

「あんたさっきソフトン様の手ぇ握ってやがったわね。ちょっとそこに正座なさい」
「スミマセンゴメンナサイ」
「何のつもり?お言い」
「いやちょっとその………先生マニキュアお綺麗ですねー春色ってカンジ」
「あら、そう?新しいの開けたのよ」

触れず終いでした。でも仕方ねえわなこれ。
ちょっとだけごっついけど、ちゃんと女の人の手。やっぱあいつのとは違うんだよなぁ。 魚雷先生。

「お、なんかふにふにしてる。えい」
「ぎゃあ、ひっぱるなバカー」
「小せぇなあ。もの掴むの大変じゃね?」
「お前にゃ言われたくないのら。おらー」
「ぎゃあ、こねるなアホー」

毛むくじゃらではなかった。真っ白で、それでもぬくい。
たぶん俺のよりか元気に動く手。 田楽マン。

「…うぁっちぃ」
「そうかぁ?今さっき森のくまさん対抗腕相撲百人抜きしてきたとこだからな」
「ちょ、おま、それよかちょい強く握りすぎだぞ。俺の手が潰れちまうー」
「腕相撲しようぜ」
「そんなんお前…俺負けるに決まってんじゃんか!バカバカ」

あったかいとかそう言うより、あついって言った方が似合う。
どっかで火が燃えてるみたいだ。 首領パッチ。



「…て」
「…あぁ?」
「…な、手、見せて」
「なんだコラ」
「いいじゃねーか。減るもんじゃねーし」

せんせは見せてくれなかったけど。
でも、見せて。

「…ごつごつしてんの」
「あー、うぜぇ」
「あ、でも爪はまめに切ってる感じ」
「斬って吊るすぞテメー」
「ぎゃー逆の手で鋏掴んじゃいやぁ」

ボーボボより細くて、でも破天荒よかごつくて、ソフトンほどすべすべじゃなくて、
ヘッポコ丸よかちょっと硬い、ビュテよりずっと強い、田楽マンよりずっと大きい、
首領パッチみたいに燃えちゃいないけど、なんか魚雷先生と似てる感じがして、
それでもやっぱり違う、すこし乾いた手。

銀色の鋏を握って俺を斬る、
そのくせ、なんだかんだであったけー『手』。


「………なんだ、お前」
「…え?」
「……鏡出してツラ見やがれ」

鏡なんてないよ。いやどっかにあった気もするけど。
でも、ああ、そうか。
溶けそうなくらい頬が熱い時って、涙のせいなんだっけ。



みんな暖かかった。ときどき熱かった。
なんで俺だけこんなに冷たくて、
どうして俺だけ脆く溶けていくのだろう。

理屈では当たり前に解ってるんだけど、いい加減慣れちゃいるんだけど、
ぬくもりが愛しいから求めるんだけど
そんな自覚はかえってもどかしいものを生み出してくれるのだった。




自らの身体を抱き締めてみる。
己自身ではそのつめたさが解らない。

ああ、なんだろう、
さびしい。















それは夏祭が何処でも盛んな時期のことであった。
立ち並ぶ出店に、大人達はそれほど踊らない。
軽食や飲料を調達するか、駄菓子屋でもあれば懐かしがって立ち寄る程度だ。

それでも彼らがまったく気まぐれを起こさぬわけではない。
剥き出しの風船に興味を持たずとも、謎と楽しみを込めた箱に惹かれることがないではない。
紙一枚で笑うなり肩を竦めるなり、遊びと思えば楽しみだ。
何か運命が賭かっているわけではない。それこそ子供達の様に、少ない小遣いを握りしめて来ているのでもない。
本当に運試し程度なのだと皆知っている。

紙片を切って作った簡素なくじ引きというのも、
時に玩具などに興味のない者すら引き寄せる立派な魔術である。




それは夏祭が何処でも盛んな時期のことであった。
マルハーゲ帝国最高幹部といえども少々の休暇は与えられ、思い思いに時を過ごす。
とはいえその合間には本部に顔を出さねばならぬ日もあった。
ハンペンはたまたま重なった、別の仕事を片付けてから合流するという。
ジェダは未だ顔を見せない。約束の時間を守っていないわけではないから、咎めるべきこともあるまいが。
宇治金TOKIOが現れないのは別の意味で気にかかるところだった。
砂浜に弾けすぎて溶け消えてなどいないだろうか、夏の彼ははしゃぎ過ぎるので心配だ。

レムは一応眠気と戦いながら、壁に寄りかかってぼんやりと考えていた。
他の連中は既に到着している。
「レム」
「あ、ランバダ様…」
「…眠いのか」
「え、いいえ!大丈夫ですっ」
「そうか」
戦っていない時にはやや寡黙なBブロック隊長も、別室にいるハンペンへの挨拶を済ませて戻ってきたところだった。
三大権力者には何かとそれゆえの苦労もある、らしい。ランバダは苦労を面倒という言葉で表現する。
真面目に仕事をこなすハンペンは立派なことだ、とも言っていた。
物言いが皮肉げなのは彼の癖のようなものだ。よく聞いていればきちんと労ったり褒めたりするのが解る。
「…ところで」
「はい、ランバダ様」
「あれは何をしているんだ?」

レムが意識して視界から外しかけていた方面を、ランバダは指し示した。
それはそうだろう。事情が解らなければ『それ』が気になろうともおかしくない。
レムとて始めから気にかけなかったのではなかった。
ただ最初から聞いていて事情を知ってみると、どうにもくだらないので呆れていたのだ。
とどめたところで止まるまい。殴り合いに発展するほど大変なやり取りでもない。


「だからッ、テメーの失敗を俺に押し付けんじゃねーよ!」
「失敗とか言うな!しかもお前も同じことしようとしてたんだろうが!」
「俺のは好意だ」
「俺なんて最初からお前にやろうとだなぁ」
「いるか」
「そ、う、言、う、な…!」
「テ、メ、ェ、も、な…!」


「…ええとですね」
「ああ」
「今、ちょうどどこでもお祭やってるでしょう」
「…そうなのか?」
「そうなんです、けど……なんか二人ともふらっと出かけて、くじ引きかなんかをやったみたいで」
「それで?」
「二人ともイニシャル入りのキーホルダーを当てたそうなんです。コンバットは自分のイニシャルなくて、しょうがないから一番近いのを選んだ、そうなんですけど」
「…で」
「それが笑えるくらい変なデザインだったらしいです。どっちも」
「………」

確かにくだらない話だと、ランバダにも感じられたらしい。
要するに些細なことなのだ。相手が相手だからとむきになっている。
それならば大したことがない限りは放っておこうということだ。
どうせ適当に騒いだら、適当に治まるだろうから。

「…だから俺のだけ黙って受け取っときゃいいんだよ、テメーは!」
「だからそれはお前もだろうがー!」

「あげたい気持ちっていうか、押し付けたい気持ちっていうか…普通に交換しとけばいいのに」
「……しかしな」
「?」
「自分のイニシャルのキーホルダーだろう?他人に渡しても意味がないんじゃないか?」
「あ…それ、私も最初そう思ったんですけど」

「…よく考えてみたらなんだか問題ない、みたいなんですよ」



面倒くさげに選んだ自分のイニシャルと、自分の文字が見つからず仕方なく選んだ似た音と。
安物のキーホルダーそのものに実は大した意味はない。
別に『面白いこと』に気付いたから連中は、こうして楽しげに揉めているのだろう。

KとBの字の並んだキーホルダーは二つ、テーブルの隅に放置されたままであった。










どうしようもないOVER様と、どうしようもない天の助を好き勝手…
天の助の体の仕組みも体温も天の助にとっては普通なんですよね、たぶん。
菊コンはこの二人イニシャルが似てるーとかいう話でした…CorK・B(そういえば主人公兄弟もみんなBだ)

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