重く固い何かに押しつぶされる。

重く固い何かが何かといえば、それは他の何でもなく、
豆腐だ。

奴らほど残酷で、狡猾で、恐ろしい連中はそうはない。

七枚構えたぬのハンカチもまったく役にたたなかった。





「うーん、うーん…おもいよー…」
とうふはいし、と呟きながら、天の助は薄らと目を開いた。
ぬ、ではなく、め、を開いた。
ぬのハンカチごと豆腐に潰されたかと思ったが、どうにか体は普段通りの形を保っている。
しかし。

「なんだぁ…?」

腹の上には何かが乗っている。
息苦しい。
どうやら、豆腐ではなさそうだった。

視線だけ下にずらせば、視界に入ってきたのは
オレンジ色の柔らかなとげ。

「あー…首領パッチじゃねぇか…なんだよ、も…」

うとうと、嫌になるといった風に呟いたが、首領パッチには聞こえてはいなかった。
うぅんやっくん、ごにょごにょ、と何か聞こえてくるのは寝言だろう。
いつの間にか人の腹の上に乗っかっておいて、お気楽にも夢の中。どうせ夢を見るのならいつもおやびんおやびん騒いでいる男のことも登場させてやればいいのに。
しかし彼の夢の中はやっくん色、パチ美状態の愛のメリーゴーランド。

(…なにいってんだ、俺)

仕方ない。こちらだって眠いのだから。
このままオレンジ色のとげを腹の上に置いたまま眠るか、体を揺するなりしてごつんと落としてしまってから眠るか。
息も楽ではないことだし、出来れば後者としておきたい。
だが揺すって落としたばかりに眠ったままうっかり針千本でもされた日には堪らない。それでも眠れることは眠れはするが、体に穴が開いたまま。ちっとも気楽ではない。
自分たちの側で寝ているであろう田楽マンまで巻き添えを食うだろう。
首領パッチのトゲは意思に左右されて固くも柔らかくもすることができるようなので、どうせ気分よくとげやわらかく眠っているのだからそのままにしておいてやろうか、と天の助は考えた。

何より今現在自分は眠いのだし、枕の感触は心地良いし、
そういえば首領パッチは自分の頭に敷いていた枕をどこにやったのだろう。その辺りに蹴り飛ばしてしまったのだろうか。
それに首領パッチの体は、真っ白なずっしりとした豆腐ほど、重たくは、ない。


おやすみ。




誰か三バカを叩き起こしてきてくれ、というボーボボの言葉に、名乗り出たのはヘッポコ丸だった。

破天荒がいれば彼が譲らなかっただろう。ついでに三バカ、という発言も二バカに訂正しろと怒っていたと思う。
彼は魚雷ガールの怒りを買って地獄の追試試験の真っ最中にて戦っている。それこそ天の助や首領パッチのように引きずられるばかりでなく、もはや誇りと誇りを賭けた大バトル。
三バカという言葉を使えば三人目はボーボボのような気もするのだが、考えてみればボーボボはそうバカでもない。ふざけるのは、好きかもしれないけれど。

とにかく、昼寝している三人をさっさと起こしてくるのが今の自分の仕事だ。


そうして三人のもとへ向かったヘッポコ丸は、

仰向けで寝転がり鼾をかく首領パッチと、
うつ伏せで小さな寝息をたてる田楽マンと、
腹に首領パッチを、顔の上半分に田楽マンを乗せて、豆腐が、白い豆腐がと呻いている天の助を見たのだった。

ひとつひとつ頭の下に敷いて眠っていたのであろう枕は、三つそれぞれ別の方向へと飛んでいた。


さて。
どいつから起こしてやればいいだろう。
悪夢に苦しんでいる相棒を起こすのが先か、のしかかっている二人を起こすのが、先か。




ヘッポコ丸は眉を緩くひそめて、頬をかいた。












昼寝。絵の方は、途中経過というか、話の直前…?
なので上に置いてみました(恥さらし!)
側にいて、安らかに眠れる相手というのはいいなあ。天の助の寝顔って子供みたいで可愛いです。

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