星に願いを



「なぁ、知ってるか。破天荒がまた旅に出たんだぜ」


「えーっ」
「ウソだぁ」
「ウソつきー」
「ウソじゃないぞ!」
「オレも知ってる。ウソじゃないよ」
「あの破天荒がおやびんにさよならしたの?」
「自分から?」
「やっぱり、ウソだぁ」
「だっておやびんから聞いたんだから、ウソじゃないよ!」
「誰かお見送りした?」
「してないよー」
「だって知らなかったぜ」
「おやびんだけで見送ったんじゃないかなぁ」
「なんで?」
「うーん、解るような気がするよ」
「えー?」
「破天荒、おやびんにだけさよなら言ったんじゃないかなぁ」
「うん。あいつみんなの前で改めてあいさつとか、得意じゃなさそうだもんな」
「でもおやびんに黙って行ったりしないだろうし」
「やっぱりさよなら言いながら、泣いたのかな」
「破天荒が泣くかぁ?」
「おやびんに怒られたら、きっと泣くよ」
「泣いてたっていうか嘆いてたの、見たことあるー」
「破天荒はおやびん大好きだからな」
「大好きなのになんで行っちゃったのかな」
「帰ってくるのかな」
「おやびん、黙って見送ったのかなぁ」

「そもそもさ、どーして破天荒行っちゃったんだ?」
「なんか、旅しなきゃなんなかったんだろ」
「なんで?」
「わかるもんか」
「聞いたこと、ないよー」
「教えてもらったこともないよぅ」
「初めて会った時、あいつひとりで倒れてたじゃん」
「オレ、それ知らない」
「倒れてたの。旅してて、ケガしたんだよ」
「じゃあやっぱりひとりで旅する理由があるんだ」
「なんでかな」
「なんかさぁ、冒険家ってタイプじゃないよな」
「うん。なんか探してる、ってタイプじゃない!」
「じゃあ、なんで?」
「なんでなんで言ってないでお前も考えろよ」
「きっとさぁ、何か探してるんじゃないんだよ」
「っていうと?」
「何を探したらいいか探しながら旅してるんじゃないかなぁ」
「なに、それー」
「探すものを探して、それを探すから…?あー、ぜんっぜんわかんねぇ」
「だからさ、何かを探してるんじゃなくてこう、手探りでさ。道をかき分けてるんだ」
「それって冒険家じゃないのか?」
「えー」
「わかんねぇなぁ」
「オレ、破天荒とあんまり話さなかったよ」
「オレも。怖いもん」
「えー。怖くねぇよ」
「おやびんといる時は、怖くないよ」
「そうじゃない時だってそんなに怖かないよ」
「ウソだぁ、いつも怖かった!」
「やめろよ、おまえらー」
「破天荒ってさ、あんまり自分から話さなかったよな」
「うん。いつもは黙ってて、じっとしてた」
「でもやらなきゃいけないことはちゃんとやってたぜ」
「おやびんに言われたことも、やってたぜ」
「おやびんのこと追いかけてた。じっとなんてしてないよ」
「違うよ。おやびんの側でじっとしてたんだ」

「でも今はソバにいないよ」
「旅に出ちゃったもんな」
「まさか、おやびんもいっしょに…」
「バカ、オレ達おやびんから聞いたんだぜ。破天荒が旅に出たって」
「じゃあやっぱり、破天荒がおやびんから離れてったんだ」
「泣いたかな」
「泣くなら、行かなきゃいいのに」
「泣いたかどうかなんてわかんないだろ」
「きっとやりたいことがあったんだよ」
「行きたい場所があったんだ」
「あれ?目標はないんじゃなくて?」
「行きたい場所を探しながら旅してるんだってば」
「なんだよ、それぇ」
「帰ってくるかなぁ」
「ここに?」
「わかんないな」
「でもあいつはハジケ組だぜ」
「そうだけどさ。オレ達とちょっと違うよ」
「どう違うんだよ」
「俺たちはおやびん大好きで、ハジケ組だろ?でもあいつ、おやびん大好きだからハジケ組なんだ」
「一緒じゃんか」
「違うよ」
「うん、そうかも。あいつオレたちのこと、あんまり見てなかったもん」
「そーか?」
「だってオレ、お前と間違えられたことあったぜ」
「人間にはオレ達、よく似て見えるんだよ」
「でもきっと破天荒の一番はおやびんだ」
「二番目は、自分かな」
「きっと自分よりおやびんだよな」
「じゃあそれ以外は?」
「きっと全部いっしょだよ」
「いっしょ?あんまんも肉まんも、ピザまんもぜんぶいっしょか?」
「やめろよ、その例え。お腹減るじゃんか」
「もしかしたら自分もいっしょかもよ。おやびん以外はみんな、いっしょ」
「見えてない?」
「そんなことないだろ」
「でも見えなくてもきっと困らないんだろうな」
「おやびんがいなくなったら?」
「泣くよ」
「でもおやびんから離れていったよ」
「自分から離れていったんだから、きっといいんだよ」
「それ、なんか違うのか?」

「破天荒、帰ってくるかな」
「くるよ、きっと」
「ここに?」
「ここかな。ハジケ組だもん」
「でも、おやびん大好きだからハジケ組なんだぜ」
「それだとどうなんだ?」
「おやびんいなかったら、ここに戻ってこないよ」
「おやびんいなくなるのか!?」
「ヤダ!」
「バカ、例え話ってヤツさ。だってあいつの一番はおやびんだぜ」
「帰る場所っていったら、おやびんか」
「オレたちだけだと、だめ?」
「だからさ、オレたちだってその他といっしょってことじゃないか?」
「そうかなぁ」
「おやびんがいなかったら、あいつハジケ組にいようとしないよ」
「おやびんがいなかったらハジケ組はないよ」
「だから例え話だって」
「おやびんがいたらきっと戻ってくるな。いなかったら、戻ってこない」
「おやびんがいないのヤダー」
「泣くなよぅ」
「でもおやびん、自分も旅に出たいなぁと思ったらきっと行っちゃうんだぜ」
「いっしょに行きたいなー」
「ダメッて言われたら?」
「うーん…」
「そしたら破天荒、どうするかな」
「探しにいくんじゃないかな」
「どこに?」
「どこかだよ」
「きっと、世界中を探すよ」
「破天荒にはおやびんレーダーがついてるんだよ」
「マジ?」
「オレはついてると思うね」


「おやびん、黙って見送ったんだ」
「寂しくなかったのかな」
「どうかなぁ」
「おやびんは去るもの拒まず、来るもの追わず」
「そんなことないよ、選んだりだってするよ」
「破天荒のことは止めなかったんだ」
「オレ正しいと思う。だって破天荒、したいことがあるんだろ?」
「知らなーい」
「だからそれも、例え話だよな。オレたちの」
「例え話ばっかりだ」
「だってオレ、破天荒のことよく知らない」
「オレもしゃべったことない」
「オレはさ、おやびんの話を聞いたことあるぞ」
「オレもある。ああいうの、『おのろけ』っていうんだ」
「ホントか?」
「黙ってるとこをよく見た」
「黙ってる方がいいこともあるんだよ」
「破天荒はそっちのが好きなんだ」
「おやびんと話すのは好きだと思う!」
「ハジケはあんまり得意じゃない!」
「それが破天荒だよなー」
「だから、それでいいんだよ」
「おやびんが見送ったのも、それでいいのかな」
「おやびん、それでいいって思ったから見送ったんだよ」
「いつか帰ってくるって思ってるのかな?」
「破天荒が約束したかもしれないよ」
「帰ってこなくても怒らないんじゃないかな」
「でも破天荒は帰ってくるよ」
「おやびんのところに?」
「うん」


「破天荒には破天荒の考えがあるんだよ」
「それ、どんなの?」
「わかんないよ」
「おやびんにも、おやびんの考えがあるんだ」
「どんなの?」
「もっとわかんない」
「どっちも上手くいくといいな」
「でもなかなかそうはいかないよ」
「お願いごとしようか?」
「笹の葉ー」
「くつしたつるそうぜ」
「バカ、七夕やクリスマスじゃないんだぞ。サンタにいったって、願い事は叶えてくれないよ」
「織り姫と彦星もまだ当分あえないよ」
「じゃあ誰にお願いすんだ?」
「お願いかぁ。背が伸びるといいなぁ」
「今日の晩ご飯はハンバ−グがいい」
「おまえらの願い事なんて聞いてねえよ!」
「ひでえ。オレ、背が低いの気にしてるんだぞ。お前よりちょっと空が遠いんだぞ」
「…あ、そうだ。流れ星だ」
「そっかぁ。夜になったら!」
「そうそうないよ、流れ星なんて」
「空にはあんなに星があるから、いつでもどれかしら流れてるよ」
「そうなの?」
「じゃあみんなでずっとお願いしてようぜ!」
「うん、いつか叶う!」
「そうかなぁ」
「そうだよ」



「オレさ、破天荒怖かったけど、嫌いじゃなかった」
「無口だけど悪いやつじゃなかったよな」
「オレ達とはあんま喋らなかったけどな」
「もっと喋っとけばよかったな」
「帰ってきて、あいつが嫌がらなかったらな」
「でもここに帰ってくるのかな?」
「おやびんがいればな」
「そっかぁ」
「そうでなくても、いつかまた会えるんじゃないかなぁ」
「いつかっていつだ?」
「知らないよ。流れ星に聞けよ」



「破天荒が幸せになりますように」
「おやびんも幸せになりますように」
「オレたちも幸せだといいな」
「でも、世界はあんまり平和じゃないよ」
「カツラ組のせいだぁ」
「夕飯はハンバーグー」
「オレはカレー食べたい」
「カツ丼!」
「だから、自分の願いごとはあとにしろってば!」


「じゃあ、夜になったら外に集合な」
「うん」
「忘れんなよ」





『みんなの願いが叶いまように』












「コパッチを」というリクエストを頂きまして、拙いながら書かせていただきました。
大勢の子供が集まったり離れたりしながら話してるようなものを書きたかったんですが…
コパッチ達にも個性があるんだろうなぁと思います。違うものの見方をして、考え方をして。
そんな彼らが揃って夜空を見上げて、いくつもの幸せを願う話…

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