「…あー。さっみぃなあ」
「そうだね」
「まっ!なに可愛い子ぶっちゃって!北風の中のヒロインになって温もりまで到達するつもり、アンタってば!」
「いや、それわけわかんないよ!っていうか首領パッチくんからふったんでしょ!」
「チキショー、ヒロインハオレダ、オレダー…ガガーピー」
「えッ、機械になった!?」
「ソフトン様、マフラーを編みましたの!お気に召すかは解らないけど…!」
「マフラー……な、がいんだな。随分…」
「愛の長さですわ」
「オイオイ、これソフトンの身長のざっと三倍はあるのら」
「…うるさいわね。アンタ、ソフトン様の肩から降りなさい!」
「えー。寒いから動きたくないのら」
「犬はよろこび庭駆け回ってらっしゃい。これしきの寒さでどうこう言うもんじゃないの」
「自分は嬉々としてマフラー編んでるクセに。なー、ヘッポコ丸」
「…あ、ああ」
「な」
「…聞こえてるわよ、アンタ…」
「え……わ、わ!…わー!」
「あ、天の助!?」
「コラァ!待ちなさい!」
「ふー。人肌もぬっくい季節なのら」
「……どうやって巻いたものか」
「ふー…危ないところだったぜ」
「ガガーピピー」
「…って、首領パッチなにがあったの!?」
「いや、それがね…」
「ピー。トコロテンサムソウ、サムソウ……ガガガ!!」
「寒そうってオマエ、あ、おい!……なービュティ、あれどこ行くんだ?」
「さあ……」
「なんだったんだよ」
「…って確かに天の助君、寒くない?」
「なんで?」
「その…一応裸なわけだし」
「ところてんってのは冷蔵庫に入れとくもんだぜ。なあ」
「うん?…そっか、それもそうだね」「…っていうか、こうして見るとわりと服着てない人いるなあ」
「ガガー、ピー」
「…はっ!追っ手が来やがったか!」
「ガピョガッピュピピューン」
「くそ、何が目的だ!これか!このラムネが欲しいのかァーッ!」
「ぴー」
「…ぴー?は?何言ってんのお前」「さむい」
「ふーん」
「さむいの。あっためて」
「何が寒いだ、鳥肌ひとつたててないくせに」
「心が寒いのよ…心が寒いんだよオオオォ!!」
「そうかアアァ!……ちゅーでもする?」
「いいね」
「それじゃ、いきますか」
「いっちゃいますか」
「ふう…」
「あ、へっくん」
「…あれ?ボーボボさんと首領パッチ、何やってるんだ?」
「遠くてよく解らないね」
「てりゃ!」
「ひッ!…なにすんだ、天の助!」
「俺、つめたい?」
「ひ、ひんやりした…」
「わーい、へっくんが驚いたー」
「驚いた、じゃないだろ!」
「うーん、うーん」
「素敵!やっぱりその色で間違ってなかったわ、ソフトン様」
「そうか…」
「…うーん…うーん…」
「けどもう少し端を明るくした方がいいかしら?」
「いや、これもいいと思うぞ」
「まあ、ならよかった…!じゃあ次はセーターを」
「…うー……ん」
「…コラー!アンタちょっと黙ってなさい!」
「マフラーで一緒に締められてるのらー!くるしいのらーッ!」
「お前、寒くないのか?」
「だからところてんってのはさあ」
「…あ。破天荒さんだ」
「ん?」
「え?」
「お、おやびん…」
「……」
「……」
「…なにを……!!」
「…暖かかったわ」
「…お前だってそうさ」
「…なにが……何があったんですかおやびーん!!ボーボボ、テメー何しやがった!」
「愛し合ってる〜ふたぁ〜り〜」
「怪しい歌で誤魔化すんじゃねぇ!」
「よう破天荒、どこ行ってたんだ?」
「…お、おやびん!俺はおやびんご所望のカイロを買って参りました!」
「マジで、やった!カイロ!カイロ!」
「お好きな様にお使いください…!!」
「ラブロマスンティ〜チャ〜ラブロマンス〜ティ〜チャア〜」
「なんか変な揉め方してるね。ボーボボ歌っちゃってるし」
「…いつものことだろ?」
「ふーん、デコッパチとあいつらってそーなんだ」
「…うん。なんだかんだで、前の時からそうだったかもね」
「…ラブロマンスティーチャー!!我らワイルドチャレンジャー!!」
「ああッ、どこ行くの!あなた!」
「おやびんッ、ボーボボなんてどうだっていいじゃないですか!…カイロ開けました!」
「待ってあなたァー!…よし、カイロよこせ!」
「はい、おやびん……」
「あー、まだちっともあったかくねー」
「じきに暖まりますよ」
「待ってらんねぇー。…ああ、あなたのぬくもりが恋しいわ……やっくん」
「やっくん!?」
「やっくん」
「………おやびん。そいつならいいんですか?」
「んー?」
「ボーボボでもいいんですか」
「なにが」
「…さっきの話です」
「あー、あれ?あれだろお前、ちゅーはあったかいぞ」
「ち……!!」
「あー、まっだあったまんねえ」
「……おやびん」
「なんだよ」
「…俺なら?」
「なに」
「俺ならどうですか」
「……」「俺はあいつらと一緒ですか」
「……」
「それとも、あいつらより……下、ですか」
「……」
「おやびん……」
「……あのなあ、破天荒」
「…はい」
「辛気くせ−顔してると気温が逃げるぞ」
「…すみません……」
「こっち来い」
「…え?」
「ちっともあったまりゃしねぇ。寒い」
「……」
「寒い」
「……は、はい!おやびん!」
「なんだろ、あれ、何か上手くいったのかな?」
「遠くてよく聞こえないな」
「そうですね…って、あれ!?ボーボボさんいつの間にそこに!?」
「さっきから」
「それにしても破天荒さん、相変わらず首領パッチ君には弱いんだねえ」
「…え、あ、そうだな。この寒いのに…」
「っていうか、首領パッチ君がむしろ暑そうになってきてない…?」「首領パッチの奴、大人しいな」
「あそこが暖かいんだろう」
「そーなのか?デコっぱちの腕ん中?」
「俺は知らんが」
「しかしまあ、デコっぱちの幸せそーなこと」
「あそこが暖かいんだろう」
「そーなのか?半袖で?」
「さあな」
『おやびん。冬が来ました』
「ほら、ちゃんと端を持ってなさい!」
「うう…このクソ寒いのになんで採寸とか手伝わされてんのら、オレ…」
「…魚雷殿、そうまで正確でなくても」
「いいえ、サイズはセーターの命のひとつ!もう少しお願いします、ソフトン様」
「愛の深いにも程があるのら」
「お黙り!」
「うえーん」
「もう少し手伝ってくれるなら、余った毛糸であんたにもマフラー編んであげるわよ」
「…え、マジで!?」
「よかったな」
「わーい!わーいなのら!破天荒みたいのがいーのら!」
「…どうしてあのバカがモデルなの?」
「モテそうだから」
「……その理由はどうかと思うぞ」
『俺はあなたを少しでも、暖めることができますか?』
『使い捨てのカイロの為に走るのでも』
『この腕に、抱き締めるのでも』
「おい、破天荒…あっちい。カイロもあったまってきたし」
「…だけどおやびん、気を抜いたら風邪をひいてしまいます」
「バカは風邪ひかねーよ」
「おやびんはバカじゃありません!」
『おやびんはその気になったら、きっとなんだってどうってことないんでしょうね』
『解っていながらそうしたい俺を許してください。それに』
「破天荒ー、お前こんな体温高かったっけ?」
「いえ、そんなでもないですよ」
「あっちぃんだって」
『俺は』
『今、とても暖かいです』
「…心の中まで」