この世界には幾らでも壁があるのだ
この世界には幾らにも穴があるのだ
この世界には幾らでも弱いものがあって
この世界には幾らでも強いものがある

そうして世界は出来ているのだから

平らではありえないこの道を進むために
どこまでも進むために
この足はぬくもりに縋ってはいられない




ここから歩いていくために何かを乗り越えなくてはならない
ひとつ何かを乗り越えてその先にある何かへ
そうして繰り返す
繰り返すために誰かが手を貸してくれて

私はそれが嬉しいのだけど
嬉しいから重くはないかと不安になって

それでも信じているから
例えひとりで乗り越えなくてはならなくなったとしても
諦めることはしないしできない
ここまで来たからそう誓ったのだ




ひとりぼっちは嫌いだ
どこからでも吹いてくる冷たい風がただ寒いだけだから
そうでないのも嫌いだ
みんな冷たい風をこちらに投げつけてくるから

愛されるのは好きだけど嫌いだ
愛することと愛されることと愛して愛されることは違うから
とても強いその愛に包まれてもそれは本当は
この頭の上を通り抜けてどこかへいってしまうのだ

冷たい風を冷たいねと笑い合うことができたら
その風が吹き続けていても冷たかったことを忘れてしまえるだろうか




痛いということは受け入れも忘れもできるのに
寂しいということはどうにもなってくれはしないから

愛に縋る夢に縋る優しさに縋る何かに縋る
縋り付くことを繰り返して欲し続けて
ここにいるのだと感じ続けて

信じることが好きだ
信じることは俺を強くしてくれるから
なんでもできるのだと思わせてくれるから
背中を押してくれるから

俺はそうして自分自身にすら縋りながら進んできたのだ




この世界にあるたくさんのものと子供のころ作った砂の城
どちらが頑丈に出来ているだろう
砂の城を作ったあの公園は今でも無事で残っているだろうか

強くなる
例えどんなに周りに頼れるものがあろうとも
この腕が何も出来なければ世界は溶けてゆくのだから
強くなる
この腕を自ら強くする

例えどんなに何を信じようとも
答えを探し出すのはこの手でしかないのだから




初めて目にしたばらばらのパズルのピースから
出来上がった風景を心に作り出せるものがいるだろうか
想いをはせようがそれは現実にはない
記憶にすら無い幻影でしかない

この世界の全ては影だ
確かなものは何もない
壊れれば元には戻らない
強さも弱さも怒りも悲しみも信頼も裏切りも
なにもかも忘れれば失われる影でしかない
受け入れ放つことのすべてはまぼろしだ

実体の無い影でしかないならば光のあたることで全て消し飛んでしまうだろうか
それでいい
色の無いこの世界を俺ごとでもいい吹き飛ばしてくれ
そこにあなただけがのこるならそれでかまわないから




何かに触れ
そしてひとつ手を動かすのならそこにあるのはもう違う何かだ
そこではそれまでの何かの感触など大して役に立ちはしない

世界はカオスだと言うけれど
成長するにつれそうでなくなっていくのだというけれど
そんな言葉の意味は知らない

全てはありのままに広がっている
ありのまま生きていく他になにがあるのだろう




隠すことを繰り返す
繰り返し繰り返し重ねていくうちに
もっとも底にあるものが薄れてゆく
それは忘れ去ってはならないものだからこの腕を伸ばしておくが
それとは別の場所で
やはり全ては薄れていく

偽りという言葉がたとえどんなに薄汚れていようと
それを撥ね除けて生きるという道を選ばない
この先にあるのが泥の沼地だとしても
今立ち進んでいるのが茨の道だとしても
ここに在るのは己に他ならない

時折外から隙間を抜けて降り注ぐ光は
俺には眩し過ぎるのではないだろうか




愛という言葉は好き
受ける愛もそうだけれど与える愛が好き
愛することをしている自分も好き
あなたのことが好き
愛は注ぎ放つもの

遠い昔なにもかも無くなった時
私だけが生き残ったのだ
決して永久にはその意思を貫けぬ体を持って
私だけが生き残ったのだ

愛するということが好き
この世界で愛を抱くことが好き
だから私でいられる間は愛を貫くのだ
私でない私の抱いた鋭い殺気のように
十分な勢いをもったこの愛が好き








せかいはまじりあいくみあわさりながれることを止めない。















ずっと置いておくものではないように思うので、暫くしたら外すかもしれません。
こんなん人に見せてもなあ、という。明るいのか暗いのか何なのか。
これでこれですから、これより暗いのなんてもっと……本当はダスト行き、です。


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