〜あらすじ〜
どうなることかと波紋を呼んだかもしれない『ボーボボキャラ演じるデスノート』は、
よゆう合格のハチマキを装備した月とチクワ片手に大股開きのLの出会いによって、
たぶん無事に幕を閉じたのだった。
「あー、つかれたー」
「お疲れさまです」
「あ、どーも。俺似てた?似てただろ!似てただろうがー!」
「さあ、自分に似てたかと言われてもどうも…」
「終わったぞー!」
「わ!ボーボボが文章ではとても言い表せないポーズとってるー!」
「俺あんなポーズしたことないぞ。まあ面白いからいいか」
「リュークさん、いいの?」
「リュークでーす」
「おー、なかなか俺に似てるじゃんか」
「似てる!?」「ふー、終わった終わったー」
「…三輪車はないだろ、三輪車は…」
「ねえねえ、このハチマキ記念にもらっていい?」
「ハチマキ!?僕はしてなかったぞそんなの!」
「彼らも含めてなかなかの熱演だったとは思いますが。別の意味で」
「メイク落としてこなきゃなー」
「ああ、私も行きます。ここはどうも騒がしい」
「それでは行きましょう」
「…それ、私ですか?」
「似てる?」
「…どうなんでしょう」
「あ、自販機ある。コーヒー飲も」
「メイクはいいんですか?」
「いーよ、これ気に入ったし」
「目の前に自分に化けた人間…人間?…がいるとなかなか複雑なものがありますね」
「そーか?」
「それ、かなり苦いのじゃないですか」
「俺、苦いの好きだなー」
「そうですか?」
「おかしいか?」
「意外でした。甘い方がお好きかと」
「へー、ってそりゃ俺がガキっぽいってことかァー!」
「いいえ、私も甘いものは好きですから」
「なーんだ」
(…単純に納得したな、ずいぶん)
「なんか飲む?」
「いえ、私は喉は乾いてません」
「そういえばさっき川のようにコーヒー飲んでましたが、まだ飲めるんですか?」
「まーな」
「…そういえばそのあと滝のように吐いてましたね」
「今もやったろか」
「それではやって…いただきません。コーヒーを飲んでると甘いものが欲しくなりませんか」
「ナイスカット。………うん、食べたくなるかも。ケーキとか?」
「お好きですか」
「別に、俺なんでも食うぜ」
「へえ」
「みんな不思議がるよなー。なんでだろ」
「食べたもの、どこへ行くんです?」
「そりゃ、胃だろ」
「どこですか?」
「そりゃ、ここだろ」
「透けてますが」
「…ケーキはあれだ、ミルクレープとか好きだな」
「流しましたね。……私は苺のが好きですけど」
「あー、それも好き。基本だよな」
「確かにまあ、基本といえばそうかもしれませんね」
「うん、そんでもって上にのってる苺は最後まで残しとく」
「私もです」
「だよなー」
「私もですが、自分からそんなこと言う人もそうはいませんね」
「俺、人か?」
「人じゃないんですか?」
「どっちだろ?」
「さあ」「私の格好のままだからでしょうか、話してると不思議な感じがします」
「そーかな。そーかも」
「周りから見ると似てるのかもしれませんが」
「似てるのかなぁ」
「当人には解らないんでしょうね」
「うーん。似てるったら、マイペースなとことか」
「そうですか?」
「違うかな。俺は失敗するタイプだけど」
「失敗ですか」
「成功したいと思ってるんだけどなー」
「まあ、そうでしょうね」
「いーんだ。頑張るから」
「そうですか」
「そっちはマイペースってかさ、なんだって上手いことやれそうじゃん」
「そう見えますか?」
「ちょっと」
「そうばかりでもありません」
「まあ、そうだろうけど凄ぇよ。俺、余裕とかないからなー」
「楽しそうですよ」
「痛いけどな」
「でも、笑ってる」
「まーな」「大変ですか?」
「色々あるなー。そっちは」
「色々あります」
「同じじゃねえか」
「やってることは違っても、色々あるのは同じですよ」
「そっか。そーだな」
「楽しいことばかりには見えないでしょう」
「うーん…俺よかずっと真面目そう」
「『私』をやってて思いましたか」
「うん、まあな」
「疲れた?」
「……ちょっとな。難しいこと考えるのって大変だ」
「そうですか」
「凄いなーと思った」
「ありがとうございます。もう舞台の外ですから、肩の力を抜いてもいいでしょう」
「抜いてるぜ。ほら触ってみ、柔らかいぞー」
「……」
「……な」
「ええ。…寝心地がよさそうですね」
「寝心地!?」
「あ。コーヒーなくなった」
「器用ですね。缶を持つの」
「そーか?慣れてるからわかんねーや」
「慣れですか。私もあなたに慣れてきた気がします」
「ところてんが話したり動いたり?」
「笑ったり泣いたり怒ったり」
「するけどさ」
「私の役、大変だったんじゃないですか」
「そりゃ、ボーボボや首領パッチも一緒だろーけどな」
「苦しかったですか」
「や、楽しかったぜ」
「そうですか」
「さーて、着替えてこよ」
「いってらっしゃい」
「洗って脱ぐだけだけどなー」
「服を着るのも慣れてるようですが」
「まーな。色々着たり脱いだりするし」
「どんなの?」
「ぬのパジャマ」
「…ぬ?」
「ぬ」
「…まあ、いってらっしゃい」
「いってきまーす。戻る?」
「いえ、私はもう少しここに」
「そっか。じゃ、またな」
「ええ。いつか機会があればケーキでも食べますか」
「苺の?」
「よければ。コーヒーは苦いのが好きなんですよね」
「おっしゃ、楽しみにしとくぜ!あるかなー、次」
「さあ。まあ、その時はゆっくり」
「おう。んじゃな」
「また会おうぜ、えーと、名前…竜崎って呼ぶんだっけ?L?」
「どちらでも」
「じゃあなんか響きがカワイイから、L」
「……」
「なに?」
「…いえ。何か、そう呼ばれるのも新鮮な気がしてきて」
「慣れてねえ?」
「そんなはずないと思うんですが、どうしてか」
「まあ、またな。L」
「ええ、いつか。ところ天の助さん」
天の助を見送ったLの前を何かが駆け抜けた。
思わず目で追うとそれは首領パッチで、彼の来た方を向けばそこには難しい顔をした月が立っている。
視線が合うと、彼は肩を竦めて軽く溜息をついた。騒がしい連中の声は、もう消えていた。