「ケンちゃーん!」
「タっくーん!」
感動の再会。
側近一同も思わず涙を拭いません。
しかしムードを出すため、切ない音楽が流れます。楽団メンバーはハジケ組の皆さん、指揮者はスクール水着のハジケリストでお送りしています。
「ケンちゃん!?タっくん!?誰よ!」
がんばるビュティさん。
そして。
『このド外道がァー!」
「決まったア!決まりました!クロスカウンタァーだッ!」
「うーん、綺麗に決まりましたねー。どちらが先に立ち直るかがー、勝負です。どうでしょうー、ゲストのヘッポコ丸さん」
「互いの名を呼びながら駆け寄り、拳を同時に同角度で突き出し相手に当てて友情を確かめ合う…これは古来から伝わる儀式で」
「みんな何やってるの!?」
状況は実況天の助、解説首領パッチ、ゲストヘッポコ丸の叫んだ通りです。
破天荒は首領パッチの指示待ちで黙って立っています。
「フ…変わらないな、ボーボボ」
「お前こそな、軍艦」
そのころ漢達は自分の話に戻っていました。
彼らはいったい何者なのか。
そしてどんな因縁を持っているのか。
ボーボボと軍艦。
彼らの過去をダイジェストでお送りいたします。
それは何年か前、まだ私が幸せだったころ。
「お父様!お母様!」
「軍艦、慌てて走ると転んでしまうぞ!ボーボボ、軍艦についていてやってくれ」
「そうですね、あなた」
「その回想待ったアアァ!」
回想中断。この状況を放っておくビュティさんではありません。
「この話!よく見たら最初父親がボーボボだったってあるじゃん!」
「そうだな」
軍艦、いや一応シンデレラが頷きます。
「で、王子もボーボボでしょ!?」
「そうだ」
ボーボボも頷きました。
「それで最初の母親もボーボボ!?ボーボボとボーボボが夫婦だったの!?」
「そうだっけ?」
軍艦は何か投げ槍です。
「なんで王子とシンデレラの間に因縁があるのー!」
真実を語れそうな継母ハレクラニは、ビュティの絶叫もむなしく出てはきませんでした。
彼らの周りではお妃決定パーティ(元五代目皇帝決定戦)に集まった猛者どもがたぎる血を吐き出し、熱く叫び、何故かそこに首領パッチと天の助が混ざっています。
「おやびーん!?どこですか!おやびーん!」
首領パッチの姿をうっかり見失った破天荒の絶叫が響きます。
「…あれ?どこだ!?おい、天の助!?」
ヘッポコ丸も相棒の姿を確認できないようです。
「……」
ビュティにもどうすればいいか解りません。
「まあ、田楽食えよ」
いつの間にか田楽マンが復活しています。
「お茶漬けも食えよ」
お茶づけ星人も優しさを見せてくれます。
「ありがと…」
とりあえず、お礼は言っておきました。
「…とにかく!ボーボボが三人いるなんておかしいよ!」
どこもかしこも燃えたぎっていますが、ビュティもかなり熱くなっています。
しかし。
「いや、三人いる」
ボーボボの肯定。
「ああ。俺も見たことがある」
シンデレラ、肯定。
「私も見たことがあったな」
『なさけ有り』と書かれたヘルメットを被る怪しい軍人も肯定しました。
「誰!?」
男は既にいませんでした。
「……なんか、私も見たことあるような気がしてきた」
ビュティはいよいよ頭を抱えてしまいました。
「あ、天の助!」
そこにヘッポコ丸の声が響きました。どうやらやっと天の助を発見できたようです。
彼はどうしていたのかというと、
「ギャー!スミマセン!スミマセン!今の全部ウソー!」
「待てコラ天の助ッ!大人しくぶった斬られろクソが!」
怖そうな人を怒らせて全力で逃げていました。
名前まで覚えられています。追う側にも容赦はありません。
「む。あれはOVERお姉様」
「ちゃんとシンデレラやってるー!」
シンデレラはびっくり。ビュティはもっとびっくりです。
そう、怖そうな人はシンデレラの上の姉、OVERでした。鋏を片手に走るわ走るわ、周りで戦っていた連中がどんどん巻き込まれています。
ぷるぷるしながら逃げる天の助は必死です。命がかかっています。
OVERは天の助を何としてもその手で葬りたいようで、ちっとも足を遅めません。
「天の助!…わ!…ああ、待て!」
半泣きで滑るように逃げる天の助と怒り狂うOVERが目の前を通過してしまったので、ヘッポコ丸もそれを追いかけました。
そこに残されたのは目をまわした首領パッチ。
「私、直撃を喰らいました」
「おやびーん!」
どうやらこの騒ぎに巻き込まれてしまったようです。
「おやびん!おやびん、あの鋏の男ですか!?ガキですか!?」
「いや、天の助だった…ちきしょーアイツめ!」
どうやら前を逃げていた天の助の方にひかれてしまったらしい首領パッチ。怒って立ち上がり、彼らの去った方向へ。
「待ちやがれー!」
「ああ、おやびん!待ってください!俺も行きます!むしろ俺が行きますッ!いややっぱりおやびんと一緒に、とにかく行きまーす!」
走り出す首領パッチ、追う破天荒。
パーティーはフィナーレに近付きつつありました。
「…なんかもう、帰ろうかなあ」
ビュティはもういい加減疲れていました。
王子とシンデレラは何か、妙な連中とババ抜きしています。
「う…こ、これだッ!」
「よーし!ババが黄河にいったぞ!」
「くそ、蹴人め!…次はシンデレラだ!」
「く、どれだ…!」
「なーインダス、OVER様の怒鳴り声がここまで聞こえてくるぜ」
「ところてんの悲鳴もな」
「うーん、ルビーもう眠い…OVER様ー…」
「もうちょっとで帰ってくるからガマンだ、ほら」
「…わーい、キャンディだー!ありがとー」
「王子様優しいなオイ!俺も俺も」
「俺にもくれー!」
「僕も!」
「ンモゥ、しょうがないわねー。ビュティも食う?」
とても穏やかで賑やかな雰囲気。OVERお姉様はまだ帰ってきません。
「うん、もらおうかな…」
ビュティも王子様キャンディを貰うことにしました。
みんなでキャンディを食べていると、そこに響いたひとつの声。
それはOVERのものではありませんでした。
天の助でもありませんでした。ヘッポコ丸でもありませんでした。
首領パッチでもなく、破天荒でもありませんでした。
『ふ…ざ……け………』
「すぎィーーーッ!!」