ボボボーボ・ボーボボとその一行、マルハーゲ帝国の強者ども、それらを影で支える戦士達、多くの者が関わった『あの』戦い。
だが、関わったのは決して彼ら戦士達のみではない。
熱きバトルの進行に、そして娯楽に、多くの『この世界の者達』が関わっていたのである。
そしてこれは、その最中に生まれたある日の物語。





「なに!ミニゲームが一斉に休みを取った!?」
叫んだのは他でもない、ボボボーボ・ボーボボ。
「ということはキバハゲデュエルやボボンバーマンに参加しないでもいいということか。プルコギも」
実はミニゲームでも何かと活躍している主人公である。
「そーいうことじゃなーいんですかァー?」
やる気なく答えたのは自称主人公首領パッチ。
ボボンバーマンの敵役以外出番がないので、彼的にはどうでもいいらしい。
そして、彼らだけではない。
さりげなく沢山の出番を貰っている天の助や田楽マン、特に出番のないヘッポコ丸、ソフトン、破天荒、そしてビュティもここにいる。
「実はカードショップも今日、お休みなんだよねー」
「くだらん」
不機嫌そうに呟いたのはハレクラニだった。何故か彼もまたここにいる。
デスマネースロットにも休暇が出たので面白くないらしい。
そして軍艦もいる。OVERはいない。 サービスマンまでいる。ボーボボと田楽マンがいるので当然田ボはいない。THE ISAOも休みなので合体する必要はない。
熱い戦いはいいのだろうか。
そしてボーボボ一行とマルハーゲ帝国関係者が一緒になって息抜きをしているこの状況は一体なんだろうか。
ヘッポコ丸とビュティは内心ツッコミたかったが、他の連中があまりにも普通にしているのでなんとなく何も言えないでいた。
「お休みけっこーなのら。おまえらZブロックを働かせすぎなのら」
田楽マンは可愛らしくかつ偉そうに言い放った。
「Zブロックって…」
思わず考えるビュティ。
キバハゲデュエルにキバハゲ(副隊長)。
クイズ毛狩りでポン!にポン太郎とラジオマン。
田楽はた上げに田楽マン(元隊長)とヒビと隊員(名前無し)。
あと、THE ISAOに田ボ(原材料の一部に田楽マンを使用)。
確かによく働いている。
「…ていうか出すぎじゃない!?」
ミニゲームはZブロックによって支配される寸前だった。他の関係者はみな正体一流シェフかもしれない。そんなことを考えてしまうビュティ。
一流シェフ(ひとり二流)に潰されかけた思い出は彼女の中に根強く残っているのだった。
「でも確かにちょっとヒマだよなー」
気楽に呟いたのは天の助。ぬ献上ゲームと悪霊退散で活躍中である。どの程度の活躍であるかは不明だ。
「お前目立ちすぎ!」
「ぎゃ!」
余計なことを言うからゲームでの出番が少ないことを気にしている首領パッチに蹴られた。
ここに天敵のOVERがいなかったのは幸運と言えるだろう。いるけど。
「アンタ達ッ!静かに休んでなさい!」
魚雷ガールはソフトンに熱い緑茶を出しながら二人を睨んだ。
「スイマセン」
OVERが怖ければ魚雷ガールも怖い天の助。ちょっと調子に乗ると恐怖だけ忘れてしまうのも事実だ。
「うう…なんでアタシには専用のミニゲームがないの!なんで!?」
首領パッチ、いやパチ美は涙ながらにボボ夫に問うた。
「それはおやびん、おやびんがミニゲームに出ればおやびんの一人勝ち、他の連中の存在も霞んでしまうからでしょう!おやびんの実力は本番で発揮されるべきです」
何故か破天荒から答が来た。
パチ美は応えなかったが、差し出された冷たいコーラは受け取って一気のみする。
「けど、確かにいきなり休みだって言われても退屈ですね。ノリで全員ここにいるし…」
ヘッポコ丸がやっと問題点を指摘した。
とはいってもOVERは不在、ハレクラニは微妙に機嫌が悪いためか特に荒れることもなく、軍艦は何故かボーボボ相手にキバハゲデュエル(真ル−ル)を始めていた。


「ここで俺は味噌汁を召還する!そしてレモンにかけることにするぜ!」
「なんの軍艦、俺の方にはハトが五羽揃った!」
「くっ、作戦を変更する!霧吹きをぶちまけなくては!」


「ワケわからん!」
ビュティも絶叫する謎のルール、キバハゲデュエル。キバハゲ不在だが、彼に代わって田楽マンがジャッジをしているようだった。

「ウサギさんコンボにより一本!」

「マジでわからん!」
ビュティの驚愕は尽きない。
そこに忍び寄るサービスの影。
「サービス!」
サービス一本。
しかしビュティはサングラスカードを発動させている。

「ぐばあッ!」
「おお…あれこそ大宇宙コンボ」
「おそろしい…」

何故か揃って怯える軍艦とボーボボ。
それらの光景の横で、ビュティを見守りつつソフトンが緑茶をすすっている。
「…休みがあるなら、修行にでもいくか」
「まあソフトン様、どちらへ?」
「そうだな、大神殿まで行く暇はないが南に…」
『南はやめとけ!』
首領パッチと天の助がシンクロした。
「なぜだ?」
「南は暑いから」
「太陽カンカン照りだから」
「アンタ達、生意気なこと言うもんじゃないわよ。ソフトン様が暑さごときにどうにかなると思うの?」
魚雷ガールの一言はもっともだが、問題はそこではない。
うっかりしたことを言うと一喝飛ぶので、首領パッチと天の助はこそこそとお前言え、お前言えよと押しつけあっていた。
「……」
話にノれないので不満そうな破天荒。
そんな三人を呆れるように見つめながら、ヘッポコ丸も内心置いてきぼりにされたように感じていた。むしろ最初から置いてきぼりにされている気がしないでもない。

「そうだな…よし、お前ら注目!」

くわっと目を見開いて(目は見えないが)ボーボボが叫んだ。全員思わずそちらを向く。軍艦も向く。サービスマンも向く。ハレクラニもどうでもよさそうな顔をしながら向いた。
「ミニゲームを見に行くというのはどうだ」
「お休みじゃないの?」
ビュティが問うた。
「一斉に休みなら参加者にも何か連絡がある筈だ。代わりに誰か入ってるんだろう」
「なるほど」
確かに、と頷いたのはヘッポコ丸。
「くだらんな」
ハレクラニが笑い飛ばした。
「だが金の亡者、デスマネースロットがどうなってるか気にならないか?」
「誰が亡者だ。…フン」
気にならないこともないのか、ボ−ボボに対してむっと呟き返す。
「俺は賛成だ」
軍艦はあっさり賛成した。これでも彼はボーボボとも並ぶハジケリスト(?)である。
「他のサービスを見てまわるか。私も賛成しよう」
サービスマンのその一言に、何故かハレクラニが対抗心を燃やしたようだった。ぶつかり合う視線。ここに何か別の戦いが勃発しようとしている。
「アイツ、なんか勘違いしてね?」
「いやー、あいつプライドが高くてなあ。譲れないことになると…」
なぜか仲良さげにひそひそ話す首領パッチと軍艦。
「なら行くぞ!」
ボーボボが立ち上がった。
そして、するりと鼻毛を伸ばす。

「ホラ行くぞ!そら行くぞ!オラ行くぞったら行くぞコラー!」

縦横無尽に舞う鼻毛。
首領パッチを吹っ飛ばし、破天荒が自らそれを追いかけ、談笑していたヘッポコ丸と天の助もまとめて押し出され、ソフトンと魚雷ガールは鼻毛のヒットする前に前へ向かい、田楽マンがあわや星になりそうなところを軍艦のリーゼントにしがみつき(軍艦大慌て)、睨み合っていたサービスマンとハレクラニも一緒に前へ突き出される。


「キャー!」
「ああ、おやびん待って!」
「うわ!」
「わあああ!」
「バカ、離れろ!ひっぱるな!」
「ジャンプサービス!」
「うるさい!貴様も押すな、鼻毛!」
「うわッ、金が来た!バカガード!」
「ギャー!」
「幸せガード!」
「おやびーん!」
「わ、天の助!」


「…なにこのノリ?」
それらの光景を見ながら、ビュティは呆れて呟いたのだった。




押しつつ押されつつ走った挙げ句、舞台はカードショップ前に移る。
「あ、ホントだ!お店開いてる」
「入ってみよーぜー」
「わー」
九人でもえらい人数なのに、十二人いると正直扉もせまい。
だが首領パッチと天の助が無邪気に突入し、他の連中も後を追うように入店した。
「らっしゃーい」
微妙にやる気のない声が響く。
確かにそこにはビュティでない店員がいた。

「……」
「…誰?」
「さあ?」

首領パッチ、天の助、ボーボボが顔を見合わせて首を振った。
「いや、丸いのと四角いのはともかくボーボボは会ってるだろ!?」
店員が叫ぶ。
各所で知っている知らないの問答が行われる中、デスマネースロット以外には対して興味のないハレクラニが遅れて店に入ってきた。
「…ん?クルマン殿」
「おおっ!俺のこと覚えてる人いたよ!」
店員、いやクルマンは感動した。
「そうか!お前は電脳六闘騎士クルマン!」
やっとソフトンが思い出した。ボーボボはその横で、まだ「誰だっけ?」とだるそうに肩を竦めている。
そして田楽マンは、

「ふう…落ち着くぜ」
「落ちつけねーよ!降りろ!」

やっぱり乗車していた。

「ちょっとこいつ、皆さん小さい子の面倒はちゃんと見ててくださいよ!」
「田ちゃん、迷惑かけちゃダメだよ!」
「うわーん、揺れるのらー」
「しかしクルマン殿が何故ここに?」
一部混乱しているが、皆マイペースにカードを見たり世間話をしたりとまったりしたものだ。ハレクラニの態度もマイペースである。
「なんだ、お前こいつを知ってるのか?」
「お前には関係ない。…サイバー都市の幹部は一通り知っている」
ボーボボの問いに、冷たく答えながらも律儀に説明するハレクラニ。
クルマンもやっと田楽マンが降りたので、咳払いをひとつして一同を見渡した。
「今日はミニゲームやらショップが一斉に休みでな、サイバー都市の者も代わりに来ているのさ。ちなみにジャンケンに負けたオレはカードショップの店員だ!」
なぜか誇らしげである。
「…なんか、罰ゲームみたい」
ビュティは微妙に不快そうな顔をした。
「あらっ、そーいう意味じゃないのよ!だってゲーム見たいじゃん…あ、そーだ」
クルマンはぽんと手を打つと、ボーボボの方を向く。
「お前ら、こんな揃って来てるんだからどーせ客じゃないだろ?戦い休んでゲーム見物か?」
「まあな」
「じゃ、案内してやるよ」
「お店あけていいの?」
ビュティの問いに、クルマンはひらひら手を振った。
「お前らが揃ってここにいるんじゃ客いないしー」
「…それもそ−だね」
実はさりげなく寂しい特設ショップだった。




そんなこんなで、クルマンを先頭に歩く一行。
クルマンが誰より楽しそうだ。
「さーて皆さん、こちらが本日限定のプルコギでございマース♪」
すっかりガイド気取りのクルマン。
そこにはクマが待ち受けている、はずだった。
が。
「プルコギを!」
「担当するのは!」
「俺たちだ!」
「ハジケ村繋がりだからな!」
「おやびーん!」

「コパッチだー!」

ビュティも驚いた。そこにいたのはクマではなくコパッチ、そして
「ザコキャラ!」
「いやおやびん、名前貰いましたから!若頭ですよ!」
「それ、名前か?」
「若頭って呼んでください!」
とにかくハジケ組の皆さんだった。
「おー、破天荒もいるぞ」
「久しぶりだな!」
「アフロと女の子もいるぜ!久しぶりだ−!」
はしゃぐコパッチに、ビュティは思わず和む。
ボーボボも久しぶりだな、などと優しく返していた、その後ろでは。

「わー、こいつやわらけー!トランポリンだ!」
「ゆれるゆれる!」
「わわ、乗るな!俺はトランポリンじゃねーところてんだ!トとンしかあってねー!」
「お、おいやめてや…って俺の頭の上にも!?」
「ギザギザあたまー、びみょーにやわらけー。トゲかと思ったー」
「わー、ソフトクリームだ!ソフトクリーム屋さん?」
「ん…戦ってない時はな」
「まあ、なんだか子だくさんみたいですわね。ソフトン様」
「コイツちっちゃいぞぉ」
「俺たちの仲間?でも黄色じゃなくて白だ」
「仲間…うう、いい響きなのら。だが俺はハジケリストだー!」
「げ、こいつあなどれねー!」
「プロだ!」
「え、どこどこ?プロどこ?」
「リーゼントに乗るなってば!」
「サービス!」
「サービス!これでいいの?」
「いいや甘い、こうだ!サービス!」
「おー、ピカピカー」
「キラキラー」
「十円キズつけちゃえ」
「やめんか、雑魚!」

「…大惨事だ…」
「あいつら好奇心旺盛だからな」
呟くビュティに、破天荒が溜息混じりで呟いた。
「破天荒久しぶりだなー」
「おやびんもー!」
「おやびーん!」
「おー」
「こらお前等、おやびんに群がるな!おやびんが重いだろ!」
「おやびーん!」
「いい大人も群がるなッ!」
こちらはこちらでコパッチとザコキャラ、ではなく若頭が首領パッチに群がっている。
ビュティは困ったようにボーボボの方を向いた。すると、ボーボボは微かに震えている。

「…オマエラ全員なっちゃいねー!そこに直れ!プルコギ三千回だー!」

「できるか!」
「ぐばっ!」
「ふぎゃー!」
怒れるハレクラニが、鎧に十円玉を押し付けようとしたコパッチを剥がしてボーボボに投げつけた。











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