結局プルコギは行われず、騒ぎが大きくなるばかりなので最初に首領パッチを外に出し、他全員退出した。
「お疲れー」
「クルマンとやら、お前なぜ外に?」
「だってあの小さいの、絶対乗ってくるだろ?」
軍艦の問いに、クルマンはしれっと答えた。



「続いてはTHE ISAOでございまーす」
何かツッコまれる前に話題を変えるクルマン。
「確か田ボがカメこわすゲームだよな?」
「ちがうちがう、ウサギだよ」
「バーカ、ネコさんだろ」
談笑する三バカ。
「いや、可哀相だよ!…クルマンさん、ここにも代わりの人がいるの?」
「ございまーす!…こちらです!」
クルマンが示したその方向には、田ボと同じく金髪の少女が一人。

「…スズ!?」

思わず叫んだのは軍艦だ。スズはもじもじとしながら、軍艦に笑み返す。
「せっかくですから、何かのお役にたてればと…」
「…あ、ああ。さすがだが、大丈夫か?カメ…」
「…軍艦様のためならカメだろうがウサギだろうがネコだろうがゴリラだろうが!やります!」
「この子相変わらすイイコー!」
ボーボボも驚いた。
スズの前に瓶が現れる。一同、注目。

「せいっ!」

がしん。
スズの身長よりも高い瓶が崩壊した。
一撃で。
「…メーター振り切ってるぞ!」
「田ボより凄くねーか!?」
首領パッチと天の助は思わず絶叫。他の連中も目を見張る。田ボは聖鼻毛融合の戦士だというのに。
「次!」
叫ぶスズ。運ばれる瓶。一発。崩壊する瓶。
ガシン。ばしん。ガッ。バガン。
「…スズ…俺のために…」
「感動してる!…いや、いいのかなこれで?」
「おお…あの気持ちこそサービスなり。美しい」
「ギョラ…若い子もやるじゃないの」
「え、アンタらも感動!?」
ビュティとヘッポコ丸、必死のツッコミである。
「部下に恵まれて結構なことだ」
ハレクラニがどうでもよさげに呟いた。




軍艦がスズのことをもう少し見守っていたいと残り、他の連中はクルマンの案内で次なる場所へ。
「いやー、素晴らしいものを見せて頂きました!主人公も仲間を大切にしようぜ!」
「してるわよ!バカにしないで!」
「ボーボボ、天の助くん踏んでる!踏んでるよ!」
「ギャー!」
首領パッチは破天荒の手によって間一髪で脱出していた。
それはともかく、クルマンの明るい声が続く。
「お次はクイズ!毛狩りでポン☆でございまーす!サイバー都市関係者をはじめ、多くの方が協力してくださってまーす!」
やはり彼が一番楽しそうだった。
「サイバー都市の人がいるの?」
「暇だなー、お前ら」
「いいんだよお祭だから。はい、今回の毛狩りでポンは特別!お前ら見て驚くな!…皆さん逆さ吊りで進行します!」

「ハイ、クイズ!」
「毛狩りでポン☆よくぞ来たなお前等ー!」

突然、二人の人間が現れた。
サイバー都市電脳六闘騎士のパナとソニックである。繋げて読むと、それはとにかくどうでもよい。
「あれ?クルマンじゃないか、サボリか?」
「いーのいーの、みんなここにいるから。さー、クイズの始まりだぜ!」
「いや、始まらないよ!」

「始まるぜ!」
「始めるぜ!」
「始められるぜ!」

「始まったー!」
逆さ吊りのボーボボ、首領パッチ、天の助が登場した。
「みんな答えるの!?」
「これは凄い戦いになる…!」
「はい…!」
ソフトンとヘッポコ丸は海苔海苔だ。ビュティは絶望しそうになった。そういえばソニックの部下、絶望くんの姿は見えない。
この状況下で唯一共感を得られそうなのはハレクラニだが、一応敵なので話しかけないでおく。
「逆さ吊りサービス!」
「ぶ!」
「おわッ!」
免疫のないパナとソニックが、サービスマンの不意打ちに吹き出した。
慣れた一同はサングラスで対応。何故かクルマンまで対応に成功している。
「どんな状況においても常にサービス!これこそサービスの極意でぶッ!」
サービスマンが突如落下した。彼を吊って支えていた紐、縄、いやよく見るとテープが一枚の札によって断ち切られたのだ。
「…これはクイズだろう」
ハレクラニはやはり静かに対抗心を燃やしていた。

「普段はポン太郎がひとりで司会やってるのら。お前ら二人で司会するのら?」
ポン太郎の元上司でもある田楽マンが問うと、逆さ吊りに顔色ひとつ変えない二人はふっと笑った。ちなみにボーボボ以下三名は頭に血が昇って真っ青だ。天の助は元から真っ青だ。
「当然、司会役も一名来てくださっている。俺たちはアシスタントさ」
「そしてこのクイズには仕掛けがあるのだ!」
「おやびーん!」
せっかくの説明なのに約一名が聞いちゃいない。駆け寄ろうとした破天荒、しかし謎の白い波に遮られた。
「わ!」
「ぎゃ!」
「ぶ!」
逆さ吊りの三人が飲み込まれる。
「ぐあッ!」
「なんだー!」
パナとソニックも飲み込まれた。
「え、アンタらも!?」
「こ、これぞ司会による障害物…ごぼっ」
「この障害物に耐えつつクイズを…ぶっ」
溺れながらも説明するアシスタントの鏡。クルマンがひとり、仲間の勇姿に暢気に拍手している。
「しかし白い波とは…これは」
「む…ソフトン様、これはお米です!」
「米だと?…あそこか」
ハレクラニがそこに潜む人物の気配に気付いた。

「…お久しぶりです、皆さん!」

米の貴公子、ライス登場。
知る者も知らぬ者もビックリだ。
「クイズ、毛狩りでポンの司会者は僕です!僕だ!ぼ…うう」
しかも頭に血がのぼって真っ青。米真拳に逆さ吊りは無い。
「ダメだー!」
ビュティが叫んだ。
そんな間にも、クイズ会場はみるみるうちに米だらけだ。
「…そうだ、ボーボボ!」
「おやびん、おやびん!?テメーなにしやがる!」
「て、天の助…?」
ビュティ、破天荒、ヘッポコ丸が前に出る。
ライスは逆さ吊りのままふらふらと揺れながら、力なく呻いた。
「ク…クイズに勝ったらボーボボさんと首領パッチ先輩と天の助さんを貰おうと思ったんだけど…」
「えー!?スゴイ欲張り!」
「テメーふざけんな!許すか!」
「そ、そうだ!」
「…だ、だめだ…次の機会に…頭が痛い…」
呻くと、ライスはするすると上にあがって消えていった。


「帰ったー!」


とりあえず、ビュティは絶叫しておいた。
同時に米も消えていく。
そして米に飲まれた者達は、
「チクショー、はまんねーぞ!」
「違うだろ、そこだよそこ。ボーボボそれ取って」
「あ、そのピース右上ね」
「これが左上かな?」
「いや、微妙にカーブしてるから違うだろう」
「ジグソーパズルやってる!」
「さすがですおやびん!俺もお手伝いします!」
ヘッポコ丸が叫ぶ横で、破天荒は感涙していた。彼の中ではこのジグソーパズルのおやびんも首領パッチだ。というか実際首領パッチが仕切っていた。
その脇ではソフトンが、会場内に吊るされたテープを調べている。
「凄いな。あの騒ぎでも切れないとは」
「ふん。私の金では切れた、脆いテープだ」
ハレクラニが憎まれ口をたたく。
「ねんちゃく殿のものだろうがな」
「ねんちゃくだと?まさかそんな連中までこの大会に」
「ソフトンさん、これ大会じゃなくてミニゲーム……のはずなんだけど」
ビュティはげんなりと呟いた。
その頃、完成しかけたジグソーパズルが悪戯な風に吹っ飛ぶという大ハプニングが起こっていた。




「さー、次行きましょ次。まとめていくぜ、ぬ献上ゲームに悪霊退散!オラー!」
クルマンのテンションは下がらない。
「あれ?このゲームそんなに近くにあるの?」
「だってそーじゃなきゃ俺の移動が大変だろ」
天の助は微妙に誇らしげにズレたことを言った。そしてやはり首領パッチに蹴られる。
「わ、やめなよ首領パッチくん!」
そして『ぬ』が『ね』を倒すという謎のゲームにて一同を待っていたのは、
頂上が見えないほど積まれた『ね』の文字の山だった。
「わ!これこんなゲームじゃないぞ!」
天の助が叫ぶ。
具現化された『ね』の山積みに、ハレクラニはぽつりと呟いた。
「詩人殿か」
『その通り』
クルマンと、もうひとつの声が重なった。

「電脳六闘騎士総長、詩人。お久しぶり、もしくは初めまして」

『イス』の字の上で優雅に挨拶した詩人だったが、直後にやや表情を歪ませる。
「ぬだかねだか知らないが、文字のことならこの僕…げ、魚雷…!」
「お久しぶりね、私の生徒…またもこの四つの魚雷に立ち向かうつもりかしら」
「四つ?」
ボーボボが首を傾げる。
「いち、に、さん、よん」
首領パッチが魚雷ガール、自分、天の助、ビュティと指差した。
「えー!ビュティ魚雷だったのー!」
「違うよボーボボ!誤解だよ!…あれ、天の助くん?」
「うー…ここ、ねがいっぱいで気分わるい」
本当に気分の悪そうなぼうっとした顔をしながら、天の助はふらふらと歩いて行った。
「おい、どこ行くんだよ?」
ヘッポコ丸が思わず後を追う。
「あっちはー、ぬ献上ゲームだからーぬがいっぱい…」
「しっかりしろって!」
『ね』酔いしてしまった天の助とそれを追うヘッポコ丸が、二人揃って扉を開けた。
するとそこには、積み上げられた山と階段があった。


空から落ちてくる塊。それを積み上げ登る兎の影。待ち受ける影は袋を被っている。


「おやつ〜」

「なんだありゃー!」
「絶望くんだーッ!あとスパーラビット!」
ヘッポコ丸、続いて天の助の絶叫が響いた。
改めて言っておくとソニックの部下である二名による、『ぬ』献上ゲームではなく『おやつ』献上ゲームが繰り広げられている。
「ぬじゃなーい!」
天の助はずるりと倒れた。
「天の助ー!」
「ヘッポコ丸…俺はもうダメだ…最後にこのぬのハンカチを」
「……」
「また捨てた!ショックー!」
ヘッポコ丸はぬのハンカチには冷たかった。
「やれやれ、ガキの嫉妬は可愛らしいですね。おやびん」
「おやつ食いてー」
「後で一緒に食べましょう。おやびん」
続く魚雷合戦に飽きて途中離脱した首領パッチが自分のところに戻って来たので、破天荒は余裕まみれで機嫌もよかった。
「うーん、しかしおやつ献上ゲームになっているとはな…」
ボーボボがなぜか感動したように呟く。
「動かしてるの、誰?」
ビュティが辺りをきょろきょろ見回していると、そこに新たな人影が現れた。
「あれ、あなたは…!」
「レムよ」
「レムだと?ああ、旧毛狩り隊の」
「…あ、あの時はありがとう」
「ああ」
レムはこほん、とひとつ咳をすると改めてボーボボを見た。
「今の内に逃げた方がいいと思うんだけど」
「俺か?」
「いえ、あなたじゃない。そっちのところてん」
「なにー?」
献上ゲームに続く扉を開けたまま、天の助が起き上がりながら反応した。
「さっきからこのゲーム、憂さ晴らしみたいに繰り返しプレイしてるのが」
「うんうん」
「ランバダだから…あっ」


「と、こ、ろ、て、ん…いやがったな」
「え」

献上ゲーム側の扉付近にランバダ、出没。


「…貴様ァ、俺に繰り返し屈辱を与えやがって!!なんだあの微妙にシリアスな曲は!」
「曲なんて知るかよー!お前つまり今遊んでたんじゃん!」
「今日運んでるのは俺じゃないぞクソがー!」
「ぎゃん!」
「なんだよお前、やめろ!」
「うるさいガキ!黙ってろ!」
「お前だって俺と同じくらいだろ!」
「俺様を侮辱するなー!」

「あーあー、へっくん天の助くん…!」
「いやなんか、相当悔しかったみたいでね」
レムが手遅れだったみたい、と諦めるように呟いた。

「なんだランバダ、続きをやらんのか?じゃあ私がやろう」
「そんな単純なゲームじゃねえぞこれ。…あーバカ、今のは両方拾えるだろ!」
「あかん、右や!四つ重なってしまうで!」
「一度献上しに上がった方がいいようだねえ」

「…旧毛狩り隊の最高幹部の連中か?」
「ふざけているな」
ソフトンとハレクラニが呟くと、レムがむっとした顔でハレクラニの方を向く。
「遊んでるだけよ」
「ふん」
ビュティは『ぬ』ではなくおやつ献上ゲームに熱中しているコンバット・ブルース、薔薇百合菊之丞、宇治金TOKIO、風神のジェダを見ながらおろおろと辺りを見回した。
「ハンペンさんは?」
「ハンペン様?」
ボーボボが問うと、ビュティは追いかけっこをしている天の助、ランバダ、ヘッポコ丸に目をやる。天の助が必死すぎてヘッポコ丸が周回遅れになりつつある。
「いや、あれ止めてくれるんじゃないかなあって…」
「ハンペン様なら…あそこに」
レムが示した方を一同が見ると、そこにはハンペンがいた。

「次が落ちてくる前に急いで拾わんでどうする!わしに貸せ!」
「いやちょっと待て、うっかりタイミングを間違えると命取りにだな!」
「オイ、一マスずれてるぞ!」
「あかん!四つ積まれてもーた!」
「あーあ…」

「…大はしゃぎなのら」
「なー」
田楽マンがぷっと笑い、何故かクルマンが同調した。
その後ろでは詩人が魚雷ガールとサ−ビスマンという最凶、いや最強タッグを相手にボロボロになりながらも奮闘していた。











next




text