突如降ってきた二つの影。
トランプタワーは崩れ去る砂の城より儚く、はらはらと崩壊した。
「ああああーッ!テメーら何すんだよ!」
「誰だ!」
「誰だ!?」
三大文明が影へと怒鳴る。
タワーを崩す勢いとなった二つの影、そして中心に歩み出る小さな影がひとつ。
「いつまでもお前ら来ないもんだから見に来ちまっただろうが!」
「敵味方混合で遊んでんじゃねーよ!ね、兄者!」
「もったいないことをしたな…見事なトランプワターだった」
「えっ、ちょっと兄者!?」
現れたのは他でもない、ヘル・キラーズ極殺三兄弟。
「お前等までここにいたのか…!」
唸るボーボボ、の横で首領パッチと田楽マンは号泣している。
「僕たちの努力がムダになったのら〜…!」
「ひどいわ!ひどいわ!」
三兄弟は暫しそれを見つめて、お互い視線を交差させる。
「悪いことしたかな?」
「そうだな」
「そんなこと言ったって兄者、こいつらさあ」
「しただろーが!テメーらおやびんに謝れ!」
破天荒が叫んだ。タワーは七人による合作だったのだが、自分含め六名が省かれている。
「お前らが遊んでるから悪いんだろ!」
「そーだ!」
「なんだと!」
子供の喧嘩のようなことになってきた。
三大文明はいつの間にか下に降りて、上司に泣きついている。
「OVER様〜、アイツらあんなこと言ってますー!」
「ヒドくないですか!」
「あー、うるせぇ」
ただでさえ蹴人とルビーにくっつかれていたので、OVERは重そうに呻いた。
「OVER様冷たいですー」
「かわいそうですよ!青春の汗が散ったんですから!」
そんな二人からブーイングが飛ぶ。
「いいから黙ってやがれ、クソが!」
自分を囲む五人に怒鳴りながら、盛大に溜息を吐くOVER。
「お父さんみたい」
ぷ、と笑いながら余計なことを言う、幾度目かの復活を果たした天の助。

「……!」

「わー、OVER様が怒ったぞー!」
「落ち着いて、落ち着いてOVER様!」
「うるせえ黄河、離せ!」
「OVER様、シカトしないのな」
「ところてんさんお気に入りですか?」
「黙れインダス!ルビー!」
「いや、解りますよ!俺もメソポタミアを抱き締めてキスした」
「キャッ」
「勘違いしてんじゃねえ!」
「うん、僕には解るなあって」
「黙れつってんだろーが蹴人ッ!」


「…確かにお父さん…なのか?」
ヘッポコ丸がぽつりと呟いた。
天の助は怒ったOVERに怯えて、そんな彼の後ろに小さくなって隠れている。
「…ふ」
「あれ、ソフトンさん?」
その光景を見ていたソフトンが思わず零した笑みに、気付いたのはビュティだけだった。
「ソフトンさん、OVERのこと知らないんだっけ…あ」
呟きながら、慌てて視線を上に戻す。
下の騒ぎに気を取られて、上でも騒ぎになっていることを忘れかけていた。
そこでは、
ボーボボと首領パッチと田楽マンがトランプタワーの復興に取りかかっていた。
「またやるの!?」
タワーは着々と再建されていく。破天荒は獄殺三兄弟、正確にはビープとメガファンと睨み合っている。
どうも勢いで殴り合いまで発展しかけたようだが、ビープとメガファンの方を後から来たらしい別の二人組が止めていた。



「離せー!コイツ一回殴る!」
「いや、落ち着けよ!」
「誰がマスク被った変な野郎だ!お前だってじゅうぶん変だろ、おやびんとか言って!」
「誰が変だ!」
「落ち着かんな」
「お前も止めないか、覇王!」
「ぐわっ!いてーよガルベル、ひっかくな!」
「暴れるからだ」



「あれは確か鮮血のガルベルって…もうひとり、知らないけど」
「あいつのせいでお菓子食えなかったー」
「お菓子!?ガルベルってどんな戦いしてたんだよ…もう一人のデータ野郎、T-500とかいったような」
「ヘル・キラーズじゃねえか」
OVERが呟いた。
「ハレクラニの野郎、部下野放しにして何やってんだ」
「あんたも野放しにしとる」
「うるせー!」
「わあ、天の助!」
結局天の助はまたもや真っ二つになった。
「OVER様、さすがです!」
「ところてんさん大丈夫?」
「…よし、早くボンドでくっつけ」
「つくかー!俺は食品ぞ!」
インダス文明に叫び返す天の助は、やはり無事なようだ。


「やれやれ、ずいぶんこのフロアに人が溜まってますね」
「これじゃゲームになりません。フロア狭いし」
その通り、いい加減狭いフロアにまたも新たな影。
「あれは誰だ?」
「や、あいつがここの担当だよ」
ソフトンの声にクルマンが答えた。
「あれ、マルハーゲ四天王の…」
「プルプーか。そういやあいつ大会の方にいなかったな」
OVERが軽く鋏を振る。
「ケッ、非人間タイプは生え変わりが早い」
「何が?」
真っ二つの体をセロハンテープで貼りながら天の助が問う。
怖くないのかな、のんびりしたもんだ、とひそひそやる五忍衆に眉を顰めながらOVERはクッと笑った。
「軍艦の奴はなァ、今あた」

「待ったアァアアア!!!」

当人が現れた。
「なんだ、いたのかよ軍艦ちゃん」
「OVERァ、貴様どっから現れたー!」
OVERに掴み掛かる軍艦。五忍衆が思わず構えた時、軍艦の後ろからも別の人物が走って来た。
「ぐ、軍艦様!頭!」
「あれ、スズさん!?」
ビュティが驚いてスズに歩みよる。
「ゲーム、いいの?」
「ええ、つい軍艦様と一緒にこっちに…軍艦様、ストップストップ!」
「可愛い部下が心配してくれてんぜ」
「ウルセー!」



下がそんなことになっているので、上の連中も降りるに降りられないでいた。
「軍艦の奴、何があったんだ?OVERを恨んでるようだな」
「いや、ボーボボ知ってるはずなのら」
田楽マンがツッコミを入れた。
「おやびん、あのリーゼント誰ですか?」
「あいつかー。あいつは………私の夫!」
「え!?」
首領パッチがすっくと立ち上がる。
「仕事から帰って来たのね!子供達も待ってたわッ、アナター!」
「え!?ちょ、おやびんッ、どういうことですか!子供!?」
破天荒も同時に立ち上がり、首領パッチを引き止めようとするが止まらない。
首領パッチの発言を冗談として流せない男、破天荒。
「…軍艦はいつの間にあのとげの子を?」
「軍艦様も一人の男、恋にも走るというわけですね」
その上プルプーとラムネまで信じる始末だ。チョコチョコっとは本当にヤバいことになるまでツッコミしない。
(ヤバイ!ここは僕がなんとかしなくちゃ!)
田楽マンは余計な決意を固めた。
そして、ずいと首領パッチの前に出る。


「軍艦はアタシの夫よ!アンタ何様なの!」


「なんですって!」
「えーッ!」
首領パッチは驚愕した。ビュティも別の意味でビックリだ。
そして当の軍艦は聞いちゃいないが、彼をフォローしようとしていたスズが慌てる。
「え!?軍艦様が夫って…え!?」
「いや、信じるなって!」
ヘッポコ丸が叫ぶがスズはおろおろとするばかり。
「スズちゃんは素直ですからねー」
「まあ、この子いい子ね!」
ルビーと天の助が勝手に納得して頷き合った。

「後から出てきてなに!自分の方が相応しいとでも言うつもり!?」
「アンタこそ何よ!そっちが後出しじゃない!」
「なんですって!」

その頃当人の知らない所で怒れる二人は、掴み合いの修羅場を繰り広げていた。
ボーボボとプルプー一味がポテトチップスを食べながら観戦している。
そして『おやびんが、おやびんが』と呟いて沈む破天荒を慰めるチョコ。
ヘル・キラーズの一同はその事態を相手にもしない。
「ハレクラニ様、どこいらっしゃったのかなぁ」
「でもここにいたって知れたら大目玉じゃないか?」
「ある意味OVER様より厳しいからな」
「カネマール、まだ一円玉のままだぜ。あいつもマジメだよなあ、解ってて報告すんの」
「で、ハレクラニ様どこよ?」
輪を作って話す獄殺三兄弟、ガルベル、T-500。
そんな彼らの間を、突如何かが飛んでいった。
「わ!」
「なんだ、あれ!?」
「小さい白いのだったな」
「おおっ、さすが兄者!」
覇王が見切った通り、飛んで行ったのは田楽マン。
首領パッチの嫉妬に燃える体当たりがきまったのだ。

そして田楽マンは飛んで飛んで飛んで、まわることなく真っ直ぐに、
何かのボタンにぶつかった。

「だからOVER様、プルプー様がボボンバーマンの敵役探してるっていうんで…」
その頃下の方でOVERに事情を説明する黄河文明、の横でメソポタミア文明が悲鳴をあげる。
「ああ!」
「どうした?」
インダス文明も彼が向いた方へ視線をやった。
「ボ、ボタンが…隠しボタンが」
「なんだ、何かのトラップか?」
「あ、ああ…あれを押すと…あのボタンを押すと…」


一瞬の、間。



「フロア全体が爆発するんです」



「え」


フロア下部分の人間は皆そちらを向いた。
上部分の人間には聞こえない。ボタンにぶつかった田楽マンがぽて、と下に落ちたのをヘル・キラーズが見守っていただけだ。




巨大な爆発音が響き渡った。











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